
業界動向
Access Accepted第828回:「Summer Game Fest 2025」の盛り上がりで幕を開けた夏のゲームの祭典
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今年で5回目となる「Summer Game Fest 2025」と,その翌日から始まるPlay Days,さらにそのあいだに行われる各種配信イベントが実施された。今年もPlay Daysの開催地であるロサンゼルスで取材してきたので,“夏のゲームの祭典”がどのようなものだったかを見ていこう。
MCの笑顔で考えたイベント運営の難しさ
6月7日,今年で5回目となる「Summer Game Fest 2025」が配信され,6月9日に行われた「Xbox Games Showcase」および「PC Gaming Show」なども含め,“夏のゲームの祭典”が開催された。
4Gamerでは,6月8日から10日にかけて開催されたオフラインイベント「Summer Game Fest 2025: Play Days」(以下,Play Days)に筆者を含めた取材班を送り,精力的に取材を行っている。イベント会場では,「バイオハザード レクイエム」や「ソニックレーシング クロスワールド」など日本産の大注目の新作や,「Gears of War: Reloaded」「SWORD OF THE SEA」など数々の気になる海外タイトルが見られ,さまざまな記事を掲載しているので,ぜひチェックしてほしい。
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また,6月4日にはUnreal Engineで開発された新作のショーケースという初の試みとなった「The State of Unreal 2025」,6月5日にはPlayStationプラットフォーム恒例のイベント「State of Play June 2025」があり,さらにこの同日には任天堂が「Nintendo Switch 2」を発売するなど,例年以上にゲーム関連の情報が続いた6月だったといえよう。
日本時間の6月17日までは,恒例の「Steam Next Fest: June 2025 Edition」も開催中なので,この期間にアナウンスされたばかりのタイトルのデモや,大きく値引きされている旧作を購入している人もいるだろう。
Summer Game Fest 2025のトリとなったのは,カプコンの「バイオハザード レクイエム」だったが,MCも務める主催者のジェフ・キーリー(Geoff Keighley)氏は,「このゲームはどこのイベントで見せてもビッグニュースになるはずでしたが,我々が世界に紹介できるということに深く感謝をいたします」と,感極まった様子だった。
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上記のように,プラットフォームホルダーは自前のイベントを持っており,彼らはファーストパーティタイトルや重要な取引先の作品を選定して発表している。
一方,Summer Game Fest 2025の場合,面白いイベントにするにはサードパーティの協力に頼らなければならない。しかし,そのサードパーティでさえ欧米では統合が続いていたり,発表する作品数が大幅に減っていたりするほか,「007 First Light」のIO Interactiveのように,自社イベントで紹介するケースも見られる。そんな中,大きな発表ができて笑顔を見せたキーリー氏からは,主催としての複雑な事情が垣間見れたような気がした。
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日本のメーカーとインディーデベロッパの躍動
ロサンゼルスのダウンタウン南側にある施設,City Market Social Houseにて開催された今年のPlay Daysのスターは,間違いなくカプコンだった。「バイオハザード レクイエム」のほかにも,「プラグマタ」や「鬼武者 Way of the Sword」などの期待作を展開し,会場で最も大きな専用エリアを用意するだけでなく,インタビュールームで立て続けにメディア関係者との会合を行うなど,強力な広報活動を行っていた。
同様に,豊富なラインアップの中から「Dying Light: The Beast」「Exoborne」,そして「Warhammer 40,000: Darktide」のショーケースを行っていたテンセントもイベントを盛り上げていた。
セガやバンダイナムコゲームス,コーエーテクモゲームスなど,日本のメーカーが大きな存在感を示していたことも印象深い。
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今年のトレンド,というほどではないかもしれないが,セルフパブリッシングに挑戦する新旧のデベロッパが目立ったことは特筆できる。Co-opゲーム「FCB: Firebreak」のRemedy Entertainmentや,サンドボックス型アクションRPG「Chronicles Medieval」をアナウンスしたRaw Power Games,インドの伝統や食文化にこだわる「Dosa Divas」のOuterloop Games,脱出系アクションRPG「Mistfall Hunter」を開発する中国のBELLRING GAMESなどが,自分たちで広報活動を行おうと精力的に動いていた。
2024年には,2020年の2倍近くにおよぶ1万8825作もの新作がSteamプラットフォームでリリースされたが,これだけの作品が市場に投入されると,どれだけデベロッパたちががんばっても,ゲームが埋もれてしまう。こうしたイベントの場でアピールしたいところだろう。
また,Play Daysの会場において,カプコンやテンセントのような企業よりも目立つ,ヘッドクォーターと呼ばれる最大施設で新作を見せていたのが,いわゆるインディーパブリッシャと言われる中小パブリッシャのブース群だ。
このヘッドクォーターでは,今年はIAM8BIT,Day of the Devs, ID&@Xboxなどの常連に加え,Megabit,PM Studios,505 Games,Pearl Abyssなどが名を連ねていた。別棟では,Annapurna Interactiveが「Mixtape」や「Snap & Grab」などを展示し,同様にオーストラリアのPlaySide Publishingが「Mouse P.I. For Hire」をメディアに公開していた。
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2023年にロサンゼルスで設立さたばかりのBlumhouse Gamesも,スポットライトを当てておきたいインディーパブリッシャだ。2007年の「パラノーマル・アクティビティ」以降,ホラー映画のプロデューサーとして活動するジェイソン・ブラム(Jason Blum)氏が起業したゲーム向けブランドで,「Crisol: Theater of Idols」や「Grave Seasons」をプレイアブル展示していた。さらには「SLEEP AWAKE」の制作も発表している。
「Sleep Awake」を開発するEYES OUTは,人気ロックバンドのナイン・インチ・ネイルズのギタリストであるロビン・フィンク(Robin Finck)氏が設立に関わっており,共同ディレクターも務めている。
今年は,こうした音楽業界からの進出も目立っており,イマジン・ドラゴンズのフロントマンであるダン・レイノルズ(Dan Raynolds)氏と,マネージャーである兄のマック・レイノルズ(Mac Raynolds)氏は,キャプチャー・ザ・フラッグに特化した「Last Flag」を発表し,子供の頃から思い描いていた旗取り合戦をゲーム化する。
また,ヒップホップグループであるウータン・クランも,リーダーであるRZA氏がプロデュースしている映画のタイアップとして「Wu-Tang: Rise of the Deceiver」の制作をアナウンスした。
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ゲーマーにとってアツい時期はまだまだ続く
今年も盛り上がった夏のゲームの祭典だが,かつての夏の恒例イベントだったE3(Electronic Entertainment Expo)は,主催者である業界団体のESA(Electronic Software Association)が,この時期の復活を諦めている。来年は2026年4月27日から30日までの4日間にかけて,ラスベガスで新イベント「iicon」を開催する予定であることを発表している。ソニー・インタラクティブエンタテインメント,Nintendo of America,Microsoftが足並みを揃えて参加する意向を示しているものの,春は年末商戦向けのゲームをアナウンスするには早過ぎるし,どのように発表の場として機能していくのかは不明だ。来年のゲームイベントは,どのような盛り上がりになっていくのだろうか。
ともあれ,面白そうなゲームの情報をゲーマーの元に届けるのは,我々メディアの仕事であり,毎年夏が来ると,どんな新作が発表されるのかワクワクするし,何か見落としていないか心配になったりもする。今後も,8月のドイツで行われるgamescomや9月の東京ゲームショウが控えており,ゲーマーにとってのアツい時期はまだまだ続きそうだ。
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著者紹介:奥谷海人
4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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