結のほえほえゲーム演説：第242回「イングリッド古参ヲタクが『ストリートファイター6』参戦までの23年を振り返ってみた」

　イングリッドーー私と彼女の出会いは2002年。私の愛読書「月刊アルカディア」という格闘ゲーム専門誌でした。

　銀髪ロングヘア，赤い瞳，揺れるフリルのスカート，スラリとのびた華奢な脚。あの日の衝撃は忘れられません。一目惚れでした。

画像は「カプコン ファイティング コレクション2」収録の「CAPCOM FIGHTING Jam」
（C）CAPCOM （C）SNK CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED.

　「カプコンファイティングオールスターズ」という新作3D対戦格闘ゲームと共に発表された新キャラクターの紅一点，イングリッド。宣伝ビジュアルでは，いかにも格闘ゲームっぽいゴツめな男性キャラクターをさしおいて，背の低い華奢なイングリッドがセンターに立っていました。ミステリアスな彼女に心惹かれた私は，月刊アルカディアが発売されるたびに，新情報を期待しながらページをめくったものです。

著者近影

　2002年9月。JAMMAショーで「カプコンファイティングオールスターズ」のロケテストが開催されると知り，人生初のロケテスト参加を決意。いざ東京ビックサイトへ。上手に操作はできなかったものの，この目でイングリッドの存在を確かめられて感無量でした。しかし，ゲームセンターでイングリッドと出会える日を指折り数えて待っていた私に，衝撃の知らせが舞いこむのです……。

　「カプコンファイティングオールスターズ」発売中止！！！

　嘘だ，嘘だろ……。

　当時の私は「マブラヴ」によって発売延期に対する耐性が強化されていたので，度重なるリリース日の延期があっても，絶対にリリースされるはずだと信じていました。

　イングリッドは居たんだよ！ロケテストで会ったんだ！
　リリースされないならイングリッドの存在は消えちまうのか！？

　ショックで事態を受け止めきれなかった私は，イングリッドが載っている月刊アルカディアを読み返してばかりいました。その後なぜかガチャガチャのラインナップに入るイングリッドを見て「どんな気持ちでガチャガチャ回せばいいんだよッッ！」と涙を流しながら，気付けば保存用，観賞用，携帯用を握りしめていました。

　2004年．突然の朗報が。なんと「CAPCOM FIGHTING Jam」にて，イングリッドがゲームデビューすることになったのです。美しいドット絵で書き起こされたイングリッドにようやく出会えたときの喜びは今も忘れません。黒タイツの透け感も大変素晴らしく，フェティッシュな仕上がりに大歓喜でした。しかも2Pカラーも「カプコンファイティングオールスターズ」と同じ，黒服＋白フリルときたものですから。嬉しかったですねぇ……。（余談ですが，カプジャムでは2Pカラーが闇スキル全振りの別人格となる案もあったそうです。）

画像は「カプコン ファイティング コレクション2」収録の「CAPCOM FIGHTING Jam」
（C）CAPCOM （C）SNK CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED.

　一人称は「わし」で，語尾は「〜じゃ」という，あどけない見た目に反して高齢を感じさせる設定は「カプコンファイティングオールスターズ」から引き継がれているようでしたが，登場時に突然「ハッスルハッスル！」と言われたときは流石に耳を疑いました。ほかにも「ナウなヤングにしちゃあ不甲斐ないのう」「マジ失望じゃ！」など，1960〜80年代の流行語を巧みに使いこなすキャッチーな「のじゃロリ」っぷりに腰を抜かしたものです。死語ってレベルじゃないよ。正直最初は「こんなキャラだったっけ……？」と戸惑うことも多かったのですが，イングリッドを動かせる喜びに勝るものはありませんでした。

画像は「カプコン ファイティング コレクション2」収録の「CAPCOM FIGHTING Jam」
（C）CAPCOM （C）SNK CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED.

　2006年「ストリートファイターZERO3↑↑」に登場。ここでイングリッドが「時空を飛び越えられる」という衝撃の設定が明かされます。イングリッドが登場するたびに設定が少しずつ違うことについては，中山さんと田邊さんの公式インタビュー（こちら）でも語られていました。

　2015年，「プロジェクトクロスゾーン2」に登場。想像以上にほかのキャラとの掛け合いが多かった本作，まさかイングリッドが「龍が如く」の桐生ちゃんと楽しくお喋りする姿が見れるとは。ゲームのことを「ピコピコ」と呼ぶなど，すっかり面白おばあちゃんと化したイングリッドが大変可愛らしかったです。

　そして2025年6月7日，長い長い沈黙を破り，まさかの「ストリートファイター6」へのイングリッド参戦が発表されました。イングリッド古参ヲタク（と言ってもいいですか……？）の私にも，さすがにまったく予想できませんでしたね。未だ夢をみているような気がしますが，こうしてイングリッドとの歴史を振り返ってみると，イングリッドっていつも「今！？」ってタイミングでやってくるんですよね。


　発表されたビジュアルではイングリッドの髪型が大きく変化していることが驚きでした。正直まだ見慣れませんが，ミニスカートとタイツの組み合わせは変わらないようで，ホッと胸をなでおろしました。イングリッドの戦い方は，過去作に近いものなのか，それともまったく違った性能になるのか……未知数といったところでしょうか。

　カプジャムやZERO3↑↑は，お世辞にも「強キャラ」とは呼べない性能だったイングリッドですが，今回こそは頼む，頼むぞ……！　と祈るような気持ちです。とはいっても実際にスト6でイングリッドを動かせたらそれだけで感動しちゃう気がします。

　「ストリートファイター6」の時代設定については所説ありますが，現実世界よりテクノロジーが少し進歩した2010年頃のように見受けられます。偶然かもしれませんが，実は「ストリートファイターZERO3↑↑」のエンディングにて，イングリッドが彼女の次の戦いは「201X年」であると話すシーンがあり，これは19年越しの伏線回収になるのでしょうか……？？

　久々の登場，カマしてくれよ！！　イングリッド！！

■■結（女優・タレント）■■
女優・タレントとして活動中。国内映画祭にて主演女優賞を多数受賞。幼少期からのゲーム好きが高じ，数多くのゲーム番組でMCを務め，イトキチ（糸吉）の愛称で親しまれている。

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