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「“舞台スタマイ”はここがすごい」ネタバレ無しで語る！　9年越しに実現した「スタンドマイヒーローズ」2.5次元舞台化ゲネプロレポート

2025/09/13 18:00 　colyがおくる本格シナリオ×パズルゲーム「スタンドマイヒーローズ」（iOS / Android。以下，「スタマイ」）を原作とした「舞台『スタンドマイヒーローズ』」が，シアターサンモールで上演中だ。
　原作の世界観を舞台ならではの演出で再現し，ワケありの中途採用で“マトリ”になったヒロインと，彼女を取り巻く男性たちが織りなす物語を臨場感たっぷりに描き出す。

「舞台『スタンドマイヒーローズ』」公式サイト

　本稿では，初日の夜公演に先駆けて行われたゲネプロ公演から，原作ファンである筆者が感じた「“舞台スタマイ”はここがすごい！」を，ストーリーのネタバレ無しで紹介していきたい。

＜STORY＞
（舞台公式サイトより）

麻薬取締官、通称マトリ。
全国でもわずか240名の少数精鋭集団。

“ワケあり中途採用”でその一員になった新米捜査官・泉玲。
なかなか成果があげられず燻っていた彼女は、
ある日、迷宮入りした事件の捜査にあたる独立捜査部、
“STand Alone National Department”、通称STANDの存在を知る。

自分を成長させ、マトリに還元したい思いで加入を志願する泉だったが、
STANDからはある条件付きでの仮所属を言い渡される。

その条件とは――スカウト。

完全スカウト制のSTANDに、
刑事や情報屋、著名人などの候補者をスカウトするよう言い渡された泉。
はたして彼女は、一筋縄ではいかない彼らと信頼関係を築くことができるのか？

そしてその陰に潜む、とある“未解決事件”の謎が、少しずつ繋がっていく……。

　原作を知っている人なら，上記のあらすじからおおよその展開は予想できるだろう。とはいえ，これから舞台を観る予定のある人には，何も情報を入れないまっさらな状態で観劇してほしいとも感じている。

　そこで今回は，「観劇済のいち『スタマイ』ファンが，ストーリー展開に配慮しつつ舞台の良さを語る」（つまり若干ふわっとした表現も多い）といった内容でお届けする。

舞台「スタマイ」ここがすごい（1）
キャラクターと空気感の“再現”がすごい

　「スタンドマイヒーローズ」が2.5次元舞台化すると聞き，原作の大ファンとして最初に感じたことがいくつかある。それは，“9年越しの舞台化”に対する大きな喜びとともに浮かんだ，「『スタマイ』には2.5次元につきものの歌がない」という点や，「あの硬派なストーリーと複雑な人間関係を舞台でどこまで描けるのか」という懸念だった。

　しかも「スタマイ」は，アイドルものでもファンタジーでもなく，現実世界と地続きの世界観である。言ってしまえば，衣装は現実的で派手さはなく，奇抜な演出も難しい。そのぶん，キャラクター再現には別種の難しさがあったのではないかと思う。

　しかし実際には，ビジュアルや演技の素晴らしさはもちろん，それぞれの登場人物が背負ってきた背景と，仲間やグループを超えた人間どうしの空気感を強く感じた。「これこそが『スタマイ』だ！」と胸を張って言いたくなるほどだ。
　本音を言えば1人ずつ熱く語りたいし語れるのだが，長くなってしまうため，今回はグループごとの紹介にとどめたい。

　まずは「マトリ」から。ヒロインが所属する厚生労働省麻薬取締部（＋外務省）のメンバーは，作中のヒロインも驚くような“顔面偏差値が高い”エリート集団である。
　その肩書に深く納得させられるほど，ビジュアル面の再現度が高かった（もちろん，これはほかのグループにもいえる）。


　さらにマトリの面々を見ていて強く感じたのは，この舞台で「ヒロインが紅一点であるにもかかわらず，ハーレムを感じさせない」ということだ。
　いわゆる女性向けコンテンツでは，ヒロインをめぐる恋愛模様が描かれることが多い。しかし「スタマイ」のメインストーリーには恋愛要素がほぼなく，ヒロインもマトリのメンバーたちも，プライベートを犠牲にして職務に全力を尽くしている。

　今作の舞台では，そんな“かけがえのない仲間たち”の空気や，男性陣とヒロインとのあいだにある信頼関係がしっかりと伝わってきて，本当に嬉しかった。


　警視庁捜査一課，服部班も素晴らしかった。生身の人間が演じることで，「この人たちに取り調べされたら，そりゃあすぐ自白するだろうな……」という威圧感や，いい意味での泥臭さが強く出ていた。
　作中のヒロインが，当初は捜査一課に行くことに怖気づきそうになっていた気持ちがよく分かる。

　とはいえ，舞台の服部班は“とっつきにくい集団”というだけではない。彼らにならすべて任せられるという安心感があった。さらに，普段はカップラーメンの盗み食いやお互いのいじり合い（？）で笑いが起きるのだろうな，という想像もできて，とても楽しい気持ちになった。


　セレブ集団の情報屋Revelは，一般市民にとって最もファンタジーな存在かもしれない。想像もつかないスケールの仕事やハイソな暮らしぶりだが，彼らもそれぞれ事情を抱えて生きている。舞台という表現を通じて，彼らが同じ等身大の人間として生きている“深み”をより強く感じられた。


　限られた時間を知りながら共に人生を歩む彼らの絆が，胸に染みる。なお，Revelの槙 慶太をはじめ，登場人物の何人かは，ヒロインが敬語を使わず話せる貴重な人物たちだ。舞台では，彼らとヒロインの“気のおけない関係”のやりとり（特に日替わりネタなど）が微笑ましく，癒やしのシーンとして印象に残った。


　売れっ子小説家と人気俳優の都築兄弟もまた，現実ではなかなか縁のないキャラクターだ。仲のいい2人だが，作中屈指の重い事情を抱えた兄弟でもある。自分の才能を武器に戦いながら，人知れず苦悩し，心の奥では光を求めて手を伸ばしている彼らの姿が浮かぶようだった。
　本当の救済はストーリー上もっと先になるが，それをぜひまた舞台で観たくなった。


　そして，九条家である。メインストーリーで中心となる事件に深く関わる人々で，当主の九条を守るように生活を共にする集団だ。舞台ではこの関係性や個々の存在感の説得力が凄まじく，今回描かれたストーリーの先を知る者として，涙が止まらなかった。

　血のつながりがある人間は1人もいないのに，彼らは間違いなく「家族」なのだ。キャスト陣の演技も圧巻で，絶対にこの先の物語を舞台で観たいと強く思った。

舞台「スタマイ」ここがすごい（2）
ヒロインがすごい

　先ほど書いたとおり，今回強く印象に残ったのが，「ヒロインの泉 玲はこれだけのイケメンたちに囲まれていながら，ハーレム感を感じさせない」という点だった。これはまさしく，舞台の玲（演：佐倉花怜）の存在感あってこそだ。


　原作の玲は，薬効体質という特殊な事情でマトリに入庁した，体質を除けばどこにでもいるような女性である。守られるだけのお姫様であろうとせず，強くたくましく努力を続け，仲間たちから「根性がある」「玲だからこそ大切なものを託したい」と信頼を得ていく――。

　感情を素直に表に出し，ときには弱音も吐く彼女は，捜査官としてはまだ未熟かもしれない。だからこそ人間味があり，私たちは彼女を応援したくなるのだ。

　そんなヒロインの魅力が，舞台でも余すことなく表現されていた。とても心を動かされたし，「玲が現実に生きている」と感じられた。今回の舞台の推しどころの多くは，ヒロインの存在あってこそだと強く断言したい。

　ちなみに，原作のキャラクター別ストーリーでは，骨太なメインストーリーとは対照的に，ヒロインと男性たちとの恋愛がディープに描かれる。今回の舞台を観ていて，「この人たちとの恋愛か……」と想像してしまい，なんともドキドキする気持ちになった。
　それだけこの舞台のキャスト全員が，リアリティある存在感を放っていたということだろう。

舞台「スタマイ」ここがすごい（3）
構成・演出がすごい

　「スタンドマイヒーローズ」の原作人気の理由のひとつは，キャラクターの魅力だけでなく，骨太なストーリーにあることに異論はないだろう。
　だが最初に書いたとおり，歌もなく，登場人物の多さと話の複雑さを抱える本作を，2.5次元舞台というエンタメに落とし込むのはかなりの労力を費やしたはずだ。
　言ってみれば，海外のクライムサスペンスドラマをたった数時間に収めるようなものだからだ。


　本作では，原作のメインストーリーSeason1をベースに構成されている。2019年のTVアニメでも描かれたあたりで，最初はバラバラだった登場人物たちのつながりが次第に明らかになり，クライマックスへと進んでいく。
　今回の舞台の尺は約3時間だったが，決してダレることなく，これだけ多くのキャラクターと物語の魅力をしっかりと伝えきったのは本当にすごいことだと思う。

　「これを聞きたかった！」という名セリフも多く登場し，胸が熱くなる瞬間も多々あった。それにしても，本当に，名無し事件のキーワードが出たあたりからのゾクゾク感はすさまじかった……。
　とはいえ，たとえ原作を知らない人でも，この舞台を観れば「『スタマイ』はなぜ面白いのか」が分かるはずだと太鼓判を押したい。


　そして，構成の素晴らしさはもちろん，原作で使われたBGMもかなり大きな役割を担っていたように思う。あの音楽の数々がワンフレーズ流れただけで，一気に「スタマイ」の世界が目の前に広がる感覚になるのは筆者だけではないだろう。

　それからもうひとつ，アンサンブルの活躍にも触れておきたい。セリフ付きのモブなどを演じることも多く，今作に無くてはならない存在だった。舞台「スタマイ」の座組全体が，一つも細かいところを取りこぼさず，愛情を持って作品を作っていると感じられた。

　冒頭に書いたとおり，筆者はリリース初期からの「スタマイ」ファンだ。仕事ではなくプライベートで熱心にプレイしてきたこともあり，今回の舞台化は本当に嬉しかった。
　実際，あのテーマが流れて全キャストが舞台に揃った瞬間，「ついにこの景色が観られた」と涙があふれた。


　物語のラストではこの先の展開を思い出してしまい，フライング号泣も……。これもまた，分かってくれるファンは多いのではないだろうか。

　本舞台は，ファンとしての「スタマイ愛」を再確認する作品だった。それこそが，原作を2.5次元舞台化する意味といえるのではないだろうか。

　願わくは，舞台の彼らにまた会えるように。そしていつかヒロインが，「正義とは何か」の答えを見つける日をこの目で見届けたい。

「舞台『スタンドマイヒーローズ』」公式サイト

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