「『ヒプステ』-Ideal and Reality-」ゲネプロレポート。中王区で発生した爆発事件の真相と，国を背負う者たちの“覚悟”

　2025年9月4日，キングレコード EVIL LINE RECORDSが手がける音楽原作キャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」を原作とした舞台の新作公演「『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage -Ideal and Reality-」が，都内の品川プリンスホテル クラブeXにて開幕した。

「『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage -Ideal and Reality-」公式サイト

　本作は，2024年7月に上演された“中王区公演”の第2弾である。「ヒプステ」において，出演者全員が女性という新たな試みは，ファンにとっても新鮮に映ったのではないだろうか。
　さらに，「-Renegades of Female-」に出演したキャストが続投するということもあり，期待している人は多いだろう。

　本稿では，公演に先駆けて実施されたゲネプロの模様をレポートする。物語や演出に関するネタバレを含む記述や写真があるため，今後観劇を予定している人はご注意いただきたい。

“正しい道”とは何か――
理想を追い求める女性たちの物語

　前作に続き劇場として使用された品川プリンスホテル クラブeXは，360度の円形ステージが特徴的なことでも知られている。ステージの周りを座席が囲む造りになっており，従来の「ヒプステ」とは一味違う雰囲気に，筆者も開演前から圧倒された。


　舞台の幕が上がると，“言の葉党”党首の東方天 乙統女や勘解由小路 無花果らが姿を見せ，前作「-Renegades of Female-」のストーリーがダイジェスト形式で展開されていく。

　新人党員である天都己 一愛と碧棺 合歓の出会いや，革命組織「月の音」との戦いが，1年ぶりに舞台上で表現され，前作を観劇していたファンにとっては懐かしさを覚える瞬間だったはずだ。

　また，ダイジェストを冒頭に入れることで，初見でも理解しやすいよう工夫されているのもうれしいポイントである。


　本作では，第1回「ディビジョン・ラップバトル」が終了し，碧棺 合歓が行政監察局副局長に就任したあとのストーリーが描かれている。ディビジョン・ラップバトルの成功により支持率を上昇させた“言の葉党”は，さらなる力を手に入れるため，支援者を募ることに。

　新たな支援者として現れたのは，三条院家の当主であり，乙統女を「乙統女姉さま」と呼び慕う三条院 蒼乃風だった。


　一方，中王区内では謎の爆発事件が発生。現場に残されていた“月の音のマーク”を目にした合歓と一愛は，現在刑務所に収監されている“ツクヨミ”こと天都己 一香の元を訪ね，事件の真相を探っていく……。


　今回，テーマソングとして披露されたのは，貫禄と可憐さを兼ね備えた楽曲「QUEEN's Sanctuary」だ。本楽曲では，原作楽曲「Verbal Justice」の要素も取り入れられており，どこか聴き馴染みのあるメロディーがクセになる一曲となっている。


　前作では合歓と一愛に焦点を当てた物語が展開されていたが，本公演で注目すべきは，古くからの知り合いである乙統女と蒼乃風だろう。


　かつて共に過ごしていた2人の対比に着目して観劇すると，よりストーリーの深みや面白さを堪能できるのではないだろうか。
　また，タイトルにもなっている「Ideal and Reality（理想と現実）」だが，観劇後にあらためてタイトルを目にすると，その言葉の重みがより増しているように感じられた。

　そして，多くのファンが気になっていたであろう“天都己姉妹のその後”についても，本公演では丁寧に描かれている。刑務所で別々に収監されていた2人だが，一愛は更生プログラムの一環として，再び“言の葉党”党員として働くことになる。


　前作では，フレンドリーに接する一愛に対して素っ気ない様子を見せていた合歓が，一愛に歩み寄る姿からも，2人の信頼や絆の深さがうかがえる。


　美しさの中に力強さが溢れるライブパートでは，自然と客席からも手拍子や歓声が沸き上がり，本編とはまた違う雰囲気と熱量に圧倒される。特に，ハンドサインを掲げる場面では，自分もH歴の住人になったかのような気持ちにさせられる。

　仕草や立ち振る舞いの“リアルさ”から目が離せない邪答院 仄仄や，刑務所の看守を務める東雲 朧など，それぞれの人柄が伝わってくるパフォーマンスは，ぜひ目に焼き付けていただきたいところだ。


　「『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage -Ideal and Reality-」は，9月23日まで上演され，2026年1月にはBlu-rayの発売も決定している。それぞれが考える“正しさ”や“理想”を追求していく物語を，ぜひ現地で体感してみてはいかがだろうか。

「『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage -Ideal and Reality-」公式サイト