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印刷2025/07/22 16:45

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「ぼくのなつやすみ」シリーズを手がけた綾部 和氏が振り返る,開発者人生は「むちゃぶり」の連続だった[BitSummit]

 2025年7月20日に閉幕したインディーゲームイベント「BitSummit 13th」のメインステージで,「ぼくのなつやすみ」シリーズなどを手がけたことで知られるクリエイター・綾部 和氏のトークイベントが行われた。

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 ゲームクリエイターとして活躍する傍ら,「食べログ」カレーTOKYO百名店にも選ばれた「火星カレー」の経営者兼レシピ担当でもあり,朗読劇の脚本を手がけたりと,多岐にわたる活動を続ける綾部氏。そんな氏のトークイベントは――

 「こんにちは,妖怪です」

 実に謎めいた語り出しでスタートした。

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 綾部氏は20歳でゲーム業界に入り,今年8月に還暦を迎えるという。今回のオファーが届いたときは一瞬考えたものの,39年間もゲームを作り続けているクリエイターは珍しいと思い,何か話してみようと決めたそうだ。
 冒頭の挨拶は猫又や付喪神(つくもがみ)のように,「長年存在していると妖怪化する」という意味合いだったようだ。


「むちゃぶり」に応えてきた開発者人生


 綾部氏の開発者人生は,キャリアの最初から「むちゃぶり」の連続だったという。

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 アート系の専門学校を経て,アニメーターになるつもりだったが,たまたま同じNMK(開発会社)にいた中学時代からの先輩の「ためしにプログラマーやってみない?」の一言で,グラフィックスで応募したにもかかわらず,プログラマーとしてゲームに関わることになる。

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 サブプログラマーとして最初に手がけたアーケードゲーム「サイキック5」は無事ヒットし,その年末には1人でファミコン版の移植を担当する。このときはハードウェアの研究からOS,ライブラリまでも1人で作るという壮絶な開発体制だった。
 そして「サイキック5」の特徴である縦方向の「ものすごいジャンプ感」を,ファミコンの制約の中で(自己流だが)表現してしまう。

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 だが恐ろしいことに,その試みの無謀さに本人はおろか,周囲も気づいておらず,発売元のジャレコだけが「なんか違くない?」と思い,タイトルが「エスパ冒険隊」に変更されたそうだ。

※「エスパ冒険隊」は当時の移植もののトレンドもあり,個性的な操作感のアクションRPGに仕上げられている

 そして,時代は飛んで1997年。自らの会社ミレニアムキッチンを作って最初に開発した「ぼくのなつやすみ」でも,またしても「むちゃぶり」があった。ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)のプロデューサーから「シナリオは綾部さんがやってください。できると思います」と言われ,未経験ながら脚本を手掛けることに。その理由は,試作版のテキストが好評だったからだという。

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 元々,絵が描けるため,背景レイアウトやイベントスクリプト(演出)を担当するつもりだったが,こうしてシナリオまでも手がけることになった。あの名作は現代のインディーゲームでもそこまでは兼任しないだろう,驚くべき体制で制作されていたのだ。

 2013年発売の「怪獣が出る金曜日」まで,この体制は16年近く続く。NMK入社からは,約27年の歳月が経っていた――。


1年半でオープンワールドを作った「なつもん!」


 2021年,さらなる「むちゃぶり」が舞い込んだ。「新作の夏休みゲームを,1年半でオープンワールドで作ってください」。そうして生まれたのが,「なつもん! 20世紀の夏休み」だ。

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 どうしたら1年半で作れるのか。考え抜いた末,1週間後にはゲーム世界の端から端まで歩けるマップを作り上げたという。
 綾部氏は「ゲームは土台となる部分さえしっかりできていれば,あとから上に乗せるものはなんとかなる」と,その理由を語る。

地形図は等高線ごとにレイヤー分けされており,仮のものではあるが,比較的短期間で3Dの地形を完成させた
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 また,そこには幼少期からの経験も生かされていた。小学生のころからノートに地図を描くのが好きだったうえに,それまでの作品も当時はオープンワールドという言葉が一般的ではなかっただけで,思想的には似た構造のゲームだった。
 
 「ぼくなつ」の世界は,近景から遠景までちゃんとつながっており,そこには一貫した時間が流れている。それは,何かが見えている完成形に向けて作り上げていったわけではなく,プレイして心地いいゲームを目指して作っていたら,自然とそうした形に仕上がったのだという。

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 今回のトークイベントのように,何かをじっくり掘り下げたいときには,100個のアイデアを書き出す「1人ブレスト」をするという綾部氏。100個のアイデアを出すには相当深く考える必要があるので,良いアイデアが必ず見つかるそうだ。これは多くの人におすすめしたい手法でもあるとのこと。

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長年活躍してきた綾部氏から,3つの提言


 トークイベントの最後は,綾部氏のこれまでの歩みが凝縮された3つの提言で締めくくられた。

提言1:どんどん名前を出して,ゲーム開発やプロモーションをしませんか?

 ファミコン時代の経験から,クリエイターの名前を隠すことは,作品を本当に深く掘り下げたい人に対して良くないと考えているという。「ゲームは属人的なもののほうが絶対面白い」と語り,大手メーカーのタイトルでもメインスタッフが過去作を出すべきだと訴えた。

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 例えば,「怪獣が出る金曜日」はGDCアワードのベストナラティブ賞に選出されているが,海外でのプロモーションに過去の受賞歴を使えないのは「実にもったいない」ことだという。

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提言2:すでにゲームは,社会のメインストリームのひとつ。どうしよう!? 作り手は責任重大!?

 「ゲームを遊んでくれた人の人生が,少しでも豊かなものになるように」したいと願っている綾部氏。「ユーモアは物質と違って,分けても減らない。むしろ笑顔や幸せの総量を増やすことができる」と,その力を強調した。

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提言3:みなさん,1970年までの「CPUを使わないビデオゲーム」の時代をご存じですか?

 「ブロック崩し」のように,CPUを使わずハードウェアの組み合わせのみで複雑なゲームを作っていた時代を例に挙げ,その時代の凄腕技術者たちへのリスペクトを語った。2Dゲームの時代が終わるまでハードの進化を牽引していたのは,彼らの技術と熱意だったのだ。

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 最後に,綾部氏はスライドを使ってセール情報などを伝えていた。近景から遠景までつながり,一貫した時間が流れるそれらの世界は,ときに作り手さえも予期しなかったイベントの連なりを生み,綾部氏を感動させることがあるという。

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 「これまで技術を生かしつつ,ちょっと違うものも作りたいけど,みんなの声に応えて『ぼくなつ』のリブートも頑張ります。自分でも恐ろしいことに,10年前くらいまでは青春時代が続いていると思っていたので,今も35歳くらいのつもりです(笑)」と語ってくれたので,綾部氏とファンの「なつやすみ」はまだまだ終わらないだろう。

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