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[インタビュー]映画「8番出口」は,原作へのラブレター,そして現代を生きる人へのメッセージ。企画・プロデューサーに映像に込めた思いを聞いた
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印刷2025/08/28 12:06

インタビュー

[インタビュー]映画「8番出口」は,原作へのラブレター,そして現代を生きる人へのメッセージ。企画・プロデューサーに映像に込めた思いを聞いた

画像ギャラリー No.001のサムネイル画像 / [インタビュー]映画「8番出口」は,原作へのラブレター,そして現代を生きる人へのメッセージ。企画・プロデューサーに映像に込めた思いを聞いた
 “異変”を探して無限ループする地下道を脱出するゲーム「8番出口」の実写映画が,2025年8月29日に劇場公開される。

 「8番出口」は,個人開発者のKOTAKE CREATE(コタケ)氏が開発したタイトルで,リリースされるや否や瞬く間に話題となった。2023年に「8番出口」が与えた衝撃は大きく,今や「8番ライク」という同系ゲームが多く作られるほどの人気を博しており,世界中でファンを増やし続けている。

 そんな「8番出口」の映画化が発表されたのは2024年12月のこと。大資本による宣伝攻勢が行われる大作ゲームが映画化されるのは珍しくないが,インディーゲームが実写映画として公開されることは珍しく,この報に驚いた人も多いのではないだろうか。

 映画版の主人公は二宮和也さんが演じる「迷う男」だ。「迷う男」はゲームそのままの地下通路に迷い込み,出口を求めてさまよう。地下道では「歩く男」(河内大和さん)と何度もすれ違い,あちこちで発生する「異変」に遭遇しながら,無限ループする地下通路からの脱出を目指していく。

 今回4Gamerでは,映画「8番出口」の企画・プロデューサーを務めるSTORY inc.の坂田悠人氏にインタビューを実施。「8番出口」が映画化するに至った経緯や原作者であるコタケ氏とのやり取り,映画に込めたメッセージなどを語ってもらった。


映画「8番出口」企画・プロデューサーの坂田悠人氏(STORY inc.)
画像ギャラリー No.005のサムネイル画像 / [インタビュー]映画「8番出口」は,原作へのラブレター,そして現代を生きる人へのメッセージ。企画・プロデューサーに映像に込めた思いを聞いた

映画「8番出口」公式サイト


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは映画「8番出口」の制作経緯について聞かせてください。

坂田悠人氏(以下,坂田氏):
 「8番出口」を映画にする,という企画を2023年の12月に立案しまして,本プロジェクトがスタートしました。役職としては企画・プロデューサーという立場になります。
 私はもともとゲームがものすごく好きで,ひとりのゲームファンとして「8番出口」をプレイしました。すぐに「映画にしたい!」と考え,本作の監督・脚本でもある川村元気さんに薦めたのがすべての始まりとなります。

4Gamer:
 普段はどんなゲームをプレイしているのでしょう。

坂田氏:
 幅広く遊んでいますね。面白そうだと思ったものは,AAAタイトルでもインディーゲームでもスマートフォンアプリでも関係なくプレイしています。睡眠時間を削ってゲームをし,仕事のあとにまたゲームをして……という無限ループを繰り返しています(笑)。

4Gamer:
 原作者であるコタケさんとは,いつコンタクトを取られたのでしょう。

坂田氏:
 初めてお会いしたのは「8番出口」の発売前でした。コタケさんが制作している「Strange Shadow(仮)」に興味があり,2023年のBitSummitでご本人とお話したのが始まりでした。「8番出口」は発売日にプレイし「とんでもないゲームが出てきた!これは人気ゲームになるぞ!」という確信がありました。

ゲーム「8番出口」の地下通路
画像ギャラリー No.004のサムネイル画像 / [インタビュー]映画「8番出口」は,原作へのラブレター,そして現代を生きる人へのメッセージ。企画・プロデューサーに映像に込めた思いを聞いた

4Gamer:
 コタケさんに会って,どんな印象を抱きましたか。

坂田氏:
 ロジックと情熱をバランスよく持たれた,非常に知的な方だと思いました。ゲームクリエイターらしく,ロジカルにゲームシステムを構築してから,足し算と引き算をしていく。同時に秘めた衝動もあり,ゲームに取り入れたいものは直感的に出すようなところもお持ちだと感じましたね。
 また,ゲームを流行させるため“だけ”に何かを作る方ではない,という印象も受けました。創作の始まりは,ご自身が作りたいものやワクワクするもの。生み出した作品をより多くのプレイヤーに届けるために,ロジカルな発想をしたり,トレンドを掴んだりすることができる方だと思いました。

4Gamer:
 まさに「8番出口」から受ける印象そのままですね。原作にはストーリーがありませんが,映画化の話をコタケさんに持ち込む時点でプロットはあったのでしょうか。

坂田氏:
 その時点でプロットはなかったですね。最初は,「実写映画にするのであれば,異変をこう描きたい」「こんなシーンを作りたい」というイメージをコタケさんにお話しました。

4Gamer:
 コタケさんからは,何か提案はあったのでしょうか。

坂田氏:
 コタケさんとは映画を作るうえでいろいろなディスカッションをしましたが,特に印象深かったのが,異変探しにおけるスマートフォンについての提案でした。
 「もし自分があの地下通路に入ったら,まずはスマートフォンで写真を撮ると思う」というお話がコタケさんからあったんです。そこで映画の序盤で,主人公がスマートフォンで写真を撮るシーンを取り入れることになり,リアリティがグッと増しました。

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4Gamer:
 映画では現実世界に暮らす人間が地下通路に迷い込むわけですから,リアリティはしっかり確保しておかないと,観客も没入できないですよね。

坂田氏:
 そうですね。ゲームを映像化する際にはリアリティのラインをどこに引くかが問題になりますが,コタケさんのアイデアに助けられました。

4Gamer:
 映画にはオリジナルの異変も出てきますが,「こういう異変は出さないでほしい」という要望は,コタケさんからはあったのでしょうか。

坂田氏:
 我々を信頼して任せてくださりました。なので異変に関しては特に制限はなかったです。映画オリジナルの異変を入れることにもオープンな姿勢でしたし,最終的には確認もいただいています。映画の公開に合わせて,ゲーム側にもアップデートで異変が追加される予定ですので,ご期待ください。

4Gamer:
 ゲームの映画化では,映画サイドが主導になってゲームのイメージとは違ったシーンや設定を入れてくることも少なくありませんが,「8番出口」ではゲームを尊重して制作を進められたんですね。

坂田氏:
 私自身,ゲームがとても好きなので,「原作者やファンの方々が悲しい思いをするような映画化にはしない!」ということを強く決意してから制作に臨みました。
 気になる部分はコタケさんに見てもらっていますし,制作現場から出てきたアイデアも,私がゲームファンとしての視点でジャッジし,コタケさんに提案する前に調整することもありました。
 私としては,原作者であるコタケさんと一緒に作った映画,という印象が強いです。

4Gamer:
 映画に入れる異変はどのようにして決めていったのでしょうか。

坂田氏:
 私たちは「チームで一丸となって『8番出口』の世界を再現する」,そして「原作のファンも,ゲームをプレイしていない方も楽しめる映画にする」という2つを目標に制作を進めました。
 なので,ネタ的な要素の強い異変は映画に入れない判断をしています。また,「8番出口」には過去の名作映画をオマージュした異変もありますが,オマージュ元と並べた際に,映画として絶対に勝てないようなものは入れませんでした。日本発の映画として,世界で勝負できるようなものにしたかったんです。

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4Gamer:
 世界で勝負できる映画,というのは重視されたポイントなのかなと思っています。現に本作はカンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「ミッドナイト・スクリーニング部門」に選出されました。

坂田氏:
 この点については,川村監督も目標にしていました。私個人の夢として,インディーゲームに携わる才能溢れる方々を世界に届けたい,というところもありましたね。

4Gamer:
 映画を見て,地下通路がゲームの雰囲気そのままで,再現度の高さに驚きました。

坂田氏:
 あの地下通路のメインビジュアルを変えないということは,映画制作のうえで決めていました。ただ,現実にはあそこまで真っ白な地下通路はなくて,これを実写映画にそのまま出すと観客の皆様に違和感を与えかねないなという懸念もありました。
 現実の地下通路はもっとタイルが汚れていたり,側溝に水垢がたまっていたりします。そうしたリアルへ近づけるために細かな意匠を調整することで,現実にありそうなゲームの中の地下通路を再現できたと思っています。

4Gamer:
 映画オリジナルの要素として,地下通路にコインロッカーが設置されているのが印象的でした。こちらは予告編でもフィーチャーされている新要素ですが,どちらから出たアイデアなのでしょう。

坂田氏:
 私たち映画制作サイドです。我々が映画で描きたいテーマやコンセプトを成立させるため,実際の地下鉄の通路にありそうなものを出したい…… ということでコタケさんと相談し,通路を曲がったところにコインロッカーを置くことになりました。
 原作では曲がり角の奥では異変が登場しません。映画でもこのルールは守っていて,コインロッカーの配置も工夫しました。

4Gamer:
 細かな部分まで原作を再現しているわけですね。映画化するうえではストーリーが必要で,これは地下通路や異変にある程度の説明や解釈を付け加える側面があると感じられます。
 一方でゲームでは,異変についてさまざまな解釈ができた部分も魅力の1つでした。このあたりは原作を尊重しながらどう落とし込んでいったのでしょうか。

坂田氏:
 これは映画にとって最も重要と言える“テーマ”に関わる話なので,企画初期段階からコタケさんにも相談しながら詰めていきました。映画「8番出口」では、私たちはこんな解釈で,こんなメッセージ・テーマ性を込めて作りたい,という提案をさせていただき,ディスカッションを重ねていったイメージです。
 コタケさんからも,「8番出口」の通路の扱い方など,いくつかアイデアや要望がありましたので,それらの点も意識しながら丁寧に作り進めていきました。


4Gamer:
 映画であるからこそ,送り手の解釈とメッセージが必要なわけですね。

坂田氏:
 なぜ我々の解釈やメッセージを加える必要があったかという点については,“ゲームと映画の違い”がポイントになります。
 ゲームの場合,人によってプレイ時間はさまざまですし,遊んでいる時間自体に大きな価値があると思います。
 それに対して,映画は2〜3時間スクリーンの前に座って没入する体験です。見終えたあとは,映画を観賞した時間にどんな意味があったかをお客様は確かめたくなりますから,メッセージやストーリーがなければ,時間を無駄にしたと感じられてしまいます。コンセプトやテーマ,描きたいものに芯が通っていないと、映画は成り立たないんです。

4Gamer:
 どのように異変やあの地下通路を解釈したのでしょうか。

坂田氏:
 あまり話すとネタバレになってしまうのですが,「ゲームで繰り返し探していた異変とは一体何だろう」という部分に注目し,現代を生きる人たちに向けて,異変にメッセージを込めていったという感じでしょうか。

4Gamer:
 映画に込められたメッセージとはどのようなものなのでしょう。

坂田氏:
 「日常の些細な違和感や変化に目を向けてみることで,世の中がどう変わっていくか」というものです。

 現代社会では大小さまざまなスケールで,日常の中で気づいたけれど何もしない,見て見ぬふりをしてしまう出来事がたくさんあると思います。さまざまな出来事がSNSのタイムライン上に流れてくる。「こんなことが起きているのか」と思いつつも,静かにスクロールしてしまったり。

 ゲームでは,「何か見逃したことがあるかな」と異変を気にしつつ進めることで,最終的にプレイヤーは地下通路からの脱出を目指します。映画でもこうした日常における違和感(異変)に目を向けることで,世の中や自分がどう変わっていくのか,ということを表現してみたかったんです。

4Gamer:
 ゲームの異変を現代社会における日常で見落としていることとリンクさせているんですね。

坂田氏:
 はい。観賞後に地下鉄に乗り込むときの景色だったり,何気ない日常の風景だったりがいろいろな意味で変わる映画になればいいなと思っています。

4Gamer:
 公開後の反応が楽しみですね。まだまだお話を伺いたいですが,そろそろお時間となりました。最後に「8番出口」のファンに向けてメッセージをお願いします。

坂田氏:
 ゲームを原作や題材にした映画はたくさんありますが,映画「8番出口」は原作ゲームに向けたラブレターです。スタッフが全力を出して原作に向き合って作ったので,ファンの方々にも喜んでいただけると思います。

 異変を探すシステムを踏襲しつつ,いろいろな解釈を入れて作った映画なので,日常にある些細な違いや違和感に気付き,向き合うことの大切さが1人でも多くの方に伝わると嬉しいです。ゲームをプレイされていない方も楽しめるように作っていますし,小さなお子さんと一緒に見ても大丈夫ですので,安心して見に来てください。

4Gamer:
 ありがとうございました。


映画「8番出口」公式サイト

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