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DCGで遊びやすさと競技性を両立させるには。蓄積された知見でリデザインされた「Shadowverse: Worlds Beyond」の開発方針[CEDEC 2025]
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本セッションは,2016年リリースのDCG(デジタルカードゲーム)「Shadowverse」(以下,シャドバ)の後継作として,2025年にサービスインした「Shadowverse: Worlds Beyond」(以下,シャドバWB)について,開発時に得られた知見を共有するものだ。
シャドバWBは真っさらな新規開発ではなく,すでに人気を得た作品を約10年後に“リデザイン”して新作に仕上げるという手法が取られた。そのため,なにに注意し,どのような変更・対策を検討したのか。DCGの開発・運営に関するアレコレの内幕が明らかにされた。
登壇者は,CygamesのTCGプランナー マネージャーで,シャドバWBのリードゲームデザイナーを務める宮下尚之氏だ。
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※CEDEC運営事務局からの要請により,このレポートは講演の一部内容を省略したダイジェスト版となっている
シャドバで問題になった「遊びやすさと競技性の両立」は,シャドバWBでどうメスを入れたのか?
宮下氏はまずシリーズの概要と歴史,そしてシャドバWBが新たに開発された理由を簡単に解説し,シャドバをリデザインして生まれ変わらせる際に,どこに一番気をつけたのかを語っていった。
課題は大きく分けて2つ。「遊びやすさと競技性の両立」と「先攻が有利になる問題の解決」だったそうだ。
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最初に遊びやすさと競技性の両立だが,ゲームアプリは少しでも多くの人に触れてもらいたいという思いから,新規プレイヤーのためにゲームを分かりやすく,かつ遊びやすく仕立てたいのが大前提だそうだ。
だがその一方で,長期間プレイしてもらうためだったり,(シャドバのように)eスポーツなどへの展開も考慮したりすると,一定の複雑さや競技性も同じくらい必要になる。しかし,ゲームが長く続くほどこの両立は難しくなり,前作シャドバでもネックになっていたそうだ。
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シャドバで課題となったのは,競技性を高めるべく,カード能力とプレイの組み合わせを複雑化していったことだという。
だがその結果,カードの仕様自体が複雑になり,枠内に書かれるテキスト量もどんどん増えていってしまった。
そこで,新たに作り直すシャドバWBではアプローチを変えた。カードの能力そのものはなるべくシンプルに抑え,逆に“ルールを奥深くする”ことで競技性を担保したとのこと。
これによりプレイヤーの負担を減らし,さらにプレイを休止した人でも復帰しやすい環境を整えていった。
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カードの複雑化がなぜ問題になるかといえば,まず追加パックごとに多くのカードが追加されることで,プレイヤーはそれらを毎回覚える必要に迫られる。また,長期間離脱した人たちが(複雑化したルールを記憶できず)浦島太郎状態になってしまうこともある。
対して,ルールのほうを複雑化すれば,導入のハードルは高くなるが,1度覚えれば済む話になる。ゆえに遊びごたえのあるルール作りを目指すことが,長期的に見たときプレイヤー側の負担軽減にもつながる。
つまり,競技性は適時追加されるカードではなく,「最初から決まっているルールで担保したほうがいい」というわけだろう。
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シャドバWBでの実際の一例としては,前作シャドバでは複数の能力を備え,テキストも長大になっていたカードを刷新し,「本質的な能力だけを持ち,テキストは大胆にシンプルにした」とのこと。
以下の画像を見れば,どれだけスマートになったかがよく分かる。
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一方のルール面では,「進化」の仕組みに「超進化」を加え,より強力かつターン中にダメージを受けないようにしたり,相手のカードを吹き飛ばす機能を付与したりした。
また「エクストラPP」の仕組みも導入し,後攻のプレイヤーがPP(コスト)を好きなタイミングで,最大2回追加できるように変更した。
これらの新要素により,プレイヤーには選択肢が増え,例えば「超進化を使うか,あえて進化でとどめるか」といった判断が生まれた。これに伴い,ゲームの奥深さが新たに生まれたと宮下氏は述べる。
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ただし,ルールを難しくすると当然,新規プレイヤーのハードルはどんどん高くなってしまう。そのため,シャドバWBでは「AIアドバイス機能」や,7つのクラス(デッキ)ごとに異なるチュートリアルを搭載し,プレイヤーに対する配慮をしっかりとおこなっているそうだ。
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「先攻有利問題」を解決するため,シャドバWBで盛り込んだもの
シャドバは対戦型カードゲームであり,プレイングもターン制で,先攻・後攻が明確に分かれるルールとなっている。
しかし,シャドバはプレイデータのうえで先攻が有利という,TCGないしDCGでよくある悩みを課題としていた。そこで前作では後攻側に「進化可能ターンが早い」「進化回数と手札枚数が1つ多い」,そして「(後攻が)有利になるカード能力を用意」などの利を与えた。
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けれど,シャドバWBでは方針を転換した。後攻有利のカードデザインを導入してしまうと,それ用のカードを作り続ける必要性も生まれ,運営が長く続くほどに前述した負担が大きくなってしまうためだ。
そこで「ルールでより強固に対策する」かたちが練られた。
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ルール変更の大きな柱は,前出の「エクストラPP」だ。後攻プレイヤーは任意のタイミングでPPを増やせることで,高コストのカードを先に使用できるようになる。こうしてリソースとコストを調整しやすい構造が,結果的に「手札の質を上げる」というメリットにもつながった。
これにより宮下氏は,先攻有利問題に対して多方面からアプローチできたと,壇上で振り返った。
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なお,エクストラPPは当初,「コスト0のカード」として実装されていたそうだ。だがテストを繰り返すうち,特定のクラスが強化されすぎてしまうことと,そもそも上限枚数のあるハンドを圧迫してしまう問題が確認されたことで,システムとして落とし込んだという。
また,同機能の使用回数はテスト時は1回のみとしていたが,テストプレイヤーが出し惜しみする場面が目立ち,データを取ると「そもそも1回では不十分なバランスだった」と判明したため,現行の2回制限に変更したらしい。さらに,純粋にゲームとして面白い要素でもあったので,前半・後半でそれぞれ使えるように分けたとしていた。
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まとめると,シャドバとシャドバWBでは,後攻プレイヤーが先に進化できる点は同じであるものの,進化可能数やハンドの枚数は先攻と同じであり,カード上での有利不利も作る必要がなくなった。
その反面,エクストラPPという新ルールを覚えて使いこなす必要はあるが,結果的に仕組み自体はシンプルになった,ということだ。
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テストプレイのデジタル化により,効率が格段にアップ
続いて宮下氏は「カードパックの開発体制」に話題を移した。
関連する話題として,リリーススケジュールの変更やカードの実装方法についても語っていたが,なかでも“テストプレイのデジタル化”が,開発面での大きな効率化につながったそうだ。
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前作シャドバでのテストプレイは,カードデータを印刷し,文字どおり物理的なカードにして,アナログ対戦を繰り返していた。
パック開発の期間の大部分はこのテストに費やされていたが,1戦テストするのにもかなりの時間がかかり,さらに特殊な能力は大量のサイコロを使って目印にするなど,非効率な場面が相当あったそうだ。
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その点,シャドバWBではテストプレイ環境が一新され,フルデジタルでテストを完結できるようになった。
毎朝最新のテストアプリが自動生成されるだけでなく,PCでも対戦が可能となり,物理的なカードの取り扱いにも時間を割かずによくなったことで,テストにかかる時間が大幅に削減されたと宮下氏は語った。
しかもテストプレイの1日あたりの対戦数は,前作と比べて約5倍に増えたとのこと。これだけでも劇的な効率化を実現している。
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これ以外にも,シャドバWBでは前作の実装例を踏まえて,最初からより効率的なカードの実装方法を設計できたそうだ。
過去の経験を生かし,問題点を洗い出してから,新作のリデザインに適切に反映させる。終始穏やかに語っていた宮下氏のセッションからは,そんなシャドバWBの開発方針をうかがうことができた。
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