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名作のリメイク/リマスターが相次いだ2025年に考える。途切れることのなかった「感動の追体験」というファンタジー
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印刷2025/12/27 10:15

レビュー

名作のリメイク/リマスターが相次いだ2025年に考える。途切れることのなかった「感動の追体験」というファンタジー

 2025年を振り返ると,「再演」という言葉が何度も頭をよぎる1年だったように思う。

 新ハードの登場や話題作となった完全新作,新たな体験を生み出すインディーゲームの広がりなど,ゲームシーンにはさまざまな動きがあった2025年。そのなかで,もうひとつ目についた流れがある。それが,リメイク/リマスター作品の存在感だ。

画像は「ゼノブレイドクロス ディフィニティブエディション」(プレイレポート
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 この動き自体は以前から続いてきたものだが,とくに2024年後半から2025年にかけては,日本のゲームを中心に,名作と呼ばれてきたタイトルのリメイク/リマスターが相次いだ印象がある。

 現行機向けに再構築された「ゼノブレイドクロス ディフィニティブエディション」に,20年前のオリジナル版を最新のグラフィックスと立体的なサウンド表現でリメイクした「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」。長く復活が望まれてきた「ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ」。そして,HD-2D版で蘇った「ドラゴンクエストI&II」――。

 オリジナルを遊んだ世代にとっては懐かしくも新しく,初めて触れるプレイヤーにとっては,かつての名作を“今のゲーム”として遊ぶ機会になっていた。

画像は「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」(プレイレポート
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 長年ゲームに触れてきた筆者がSNSのタイムラインを眺めると,新作の話題と並んで,リメイク/リマスター作品についての声がよく目に入る。

 「遊びやすくなっていて素直に楽しめた」「あの時の感動が蘇る!」といった声でにぎわっている場所がある一方で,「オリジナルへの敬意がない」「いや,これこそ現代版だ」といった応酬が繰り返されること自体は,もはや年中行事のようなものだ。

 当時の体験や原作への愛着を抱えながら,今風のアレンジをどう受け入れるか。その間で揺れている人も少なくないのだろう。

画像は「ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ」(プレイレポート
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 ゲーム機やディスプレイといった環境はもちろん,私たち自身の感性も,当時とは確実に変わっている。頭ではそれを理解しているはずだ。それでも,私たちはなぜこうも「感動の追体験」を求めてしまうのだろうか。

 本稿では,2025年に登場したリメイク/リマスター作品群を手がかりに,「感動の追体験」の裏側に潜む“私たちのなかの何か”を,少し立ち止まって考えてみたい。幻想と知りつつも,それでも求めてしまう――そんな人間らしさに触れることができればと思う。

画像は「サガ フロンティア2 リマスター」(プレイレポート
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不自由だったけど「最高のもてなし」だった,あのころのゲーム


 「過去の感動は二度と手に入らない」。そう声に出してみると,なんだか深いようでいて,しかし考えてみれば当たり前の話でもある。
 そもそも「あの時の感動」とは,いったいどんな体験だったのだろうか。
 まずはオリジナルの「ドラゴンクエスト」と「ドラゴンクエストII」で,リメイク/リマスターの大元である“あのころのゲーム”から考えてみる。

写真は4Gamerの企画記事「「ドラゴンクエストの日」記念企画。ロト三部作の舞台「アレフガルド」は,どのように姿を変えていったのか?」のもの
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 ファミコン版の「ドラゴンクエスト」は,おおまかな地図は説明書にあるものの,次に何をすべきかをはっきり示すヒントは多くない。町の人の言葉をメモし,地下ではたいまつ(とレミーラの呪文)の明かりを頼りに,竜王の城へ向かう術を探す。
 モンスターとの戦いは1対1で,相手のHPや与ダメージの振れ幅も大きい。仲間はいない。倒されればそこで終わりだ。その緊張感も相まって,当時のプレイヤーは,この旅をどこまでも途方もないもののように感じていたのだと思う。

※以下,ファミコン版のドラゴンクエストとドラゴンクエストIIの写真は,4Gamerの企画記事で使用したものとWii用ソフト「ドラゴンクエスト25周年記念 ファミコン&スーパーファミコン ドラゴンクエストI・II・III」で撮影したもの
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 だが,実際の初代「ドラゴンクエスト」の世界は,縦横およそ100マス程度しかない。現代の基準で見れば,とても小さな世界だ。
 それでも,ひとりで歩き回るという体験と,その先に待つものに挑む感覚によって,この世界は「本物の冒険」として立ち上がっていた。

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 では,ひたすら迷うゲームだったかといえば,そうではなかった。
 川と橋によって世界はいくつかのエリアに区切られており,地形も覚えやすい。誘導がないように見えて,実際には地形や敵の分布によって,自然と進むべき方向が示されている。迷路状になっているのは,せいぜいメルキド高原くらいのものだ。
 戦闘もまた,適切な呪文を使えば勝利にぐっと近づく。いま振り返ると,そこにはプレイヤーを無意味に迷わせないための,「おもてなし」と呼びたくなるような配慮があった。

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 続編の「ドラゴンクエストII」では,世界はさらに広がり,仲間も増えた。旅の目的は常に明確に示されるわけではなく,仲間やキーアイテムを探しながら,手探りで世界を進んでいく構造になっている。

 とくに船を手に入れた瞬間,行動範囲が爆発的に広がったように感じたプレイヤーも多いだろう。どこへ行ってもいい。そう思えたあの感覚は,「II」を象徴する体験のひとつだ。
 だが,実際には無限に広がっていたわけではない。説明書内の世界地図を見れば,未踏の地域が世界の南半分に集中していることは一目で分かる。当時の限られたデータ量の中で,世界の広大さを演出するための,計算されたデザインだったのだろう。

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 街の人々の言葉も,基本的には次にすべきことや目的地へとつながっている。
 完全なノーヒントの謎はほとんどなく,メモを取り,情報をつなぎ合わせていけば,進むべき道筋は自然と見えてくる。
 今であればゲームの機能として集約されるようなTipsが,当時は町の会話や周辺情報として散りばめられていた(なかには難しい謎もあるが,当時は雑誌記事や攻略本で補完されることも想定されていたのかもしれない)。

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 このように振り返ると,「II」は難しいゲームでありながら,プレイヤーを突き放す作りではなかったと分かる。
 誘導や配慮といった「おもてなし」は,すでに当時のRPGに芽生えており,「ドラゴンクエスト」シリーズとも影響を与え合っていたと見るのが公平だろう。

 「いや,『II』といえばサマルトリアの王子が弱かったじゃないか」と思い出す人もいるかもしれない。実際,今でも語り草になるのが,彼の戦闘面での扱いづらさだ。
 ダメージソースとして見れば,確かに彼は控えめな存在だった。
 序盤では物理攻撃か呪文かの判断が問われ,中盤以降は,局面に応じた立ち回りが戦闘の流れを大きく左右する。「とりあえず攻撃一辺倒」な子ども時代のプレイスタイルでは,その役割がしっくりこなかった人も多かっただろう。

 ローレシアの王子だけでは倒しきれない敵に追加ダメージを与える。ムーンブルクの王女のイオナズンに耐えた敵をベギラマで掃討する。「ぼうぎょ」で耐えながら回復を待つ。「ちからのたて」でMPを温存する。ザラキで難敵をピンポイントに無力化する……派手さはないが,工夫次第で殲滅速度を高められる,いわば調整役としての存在だった。

 ただそれは,プレイヤー自身が試行錯誤を重ねて見えてくる役割でもあった。
 当時の環境ではギャップが生まれてしまったが,すべてを丁寧に伝えるのではなく,戦術を組み立てる楽しさに「自ら気づいてもらう」設計だったのかもしれない。

ムーンブルクの王女が危険な敵を眠らせ,サマルトリアの王子がベギラマを連発するのも強いムーブだった
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求めるもの,求められるもので変わる,現代リメイク作品のおもてなし


 前振りが長くなったが,こうしたかつての「おもてなし」をどう受け止め,どうアレンジしているかは,現代のリメイク作品を見ていくうえで面白いポイントであり,リメイクの方向性の大きな分かれ目になっていると思う。

 たとえば「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」は,操作感やカメラワークに現代的な要素を加えつつも,俯瞰視点の「LEGACY STYLE」を用意するなど,原作の構造や手触りを極力尊重するアプローチを選んだ作品だ。
 当時の体験をできるだけそのままに近い形で遊べるよう意識された内容で,それを魅力と感じる人もいれば,より新しい手触りを期待し,現代的な操作方法となる「NEW STYLE」でプレイした人もいただろう。

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 ステルスアクション「メタルギアソリッド3」のリメイク作品「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」が2025年8月28日に発売される。現行機のグラフィックスと三人称視点の「NEW STYLE」により,シリーズの始まりが新たに描かれている。

[2025/08/22 16:00]

 一方,2024年10月に発売され,2025年7月にはNintendo Switch 2 Editionも登場した「ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン」は,ゲーム全体を大胆に再構築したリメイクだ。
 原作の精神を意識しつつも,試行錯誤の重さや振れ幅を抑え,現代のプレイヤーに向けて遊びやすく整えられている。
 その結果,新しい層や,しばらくゲームから離れていた人にとっては入口として好意的に受け止められる一方で,原作ファンの間では,オリジナルの体験をどの程度重視するかという点で,さまざまな受け止め方が見られた。

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 初代「ドラゴンクエスト」や「II」で感じた冒険の手応えは,技術的な制約と,「プレイヤーを無意味に迷わせない」という意図的な誘導が重なって生まれていたのかもしれない。そして,「理不尽だが自由だった」と感じていた体験の正体は,このバランスにあったのではないだろうか。

 リメイクを遊ぶとき,オリジナルを知る人は,かつて感じた冒険の再来をどこかで期待している。だが,心の奥底で本当に求めているのは,その感動そのものよりも,それを生んだ当時のクリエイターたちによる「もてなし」の感触なのかもしれない。

 そう考えると,同じ「もてなし」を求めているように見えても,「当時のサービス精神を今の技術で再現してほしい」と考える人と,「不便さも含めた手触りそのもの」を大切にしたい人とでは,求めているものは少しずつ違う。すべてのプレイヤーを満足させるリメイクが難しい理由も,この微妙な線引きに関わっていそうだ。

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[2025/09/05 00:00]


リマスターの遊びやすさ,快適さがもたらしたもの


 リメイク作品ほど方向性をめぐった話にはならないものの,リマスター作品の「遊びやすさ」,いわゆる快適さの部分は人によって受け止め方が分かれやすいところだろう。

 倍速モード,どこでもセーブ,マーカー付きのマップ。プレイヤーのストレスを減らし,スムーズに遊べるよう設計されたQoL(Quality of Life)の向上は,オリジナルを知る世代にとっては,「当時はロードが長かった」「腰を据えて遊ぶ時間がなかなか取れない」といった事情もあり,素直にありがたい機能でもある。
 当時を知らない層にとっても,現代のゲームとしてサクサク遊べることは,大きな入口になる。

ゲーム進行上,“急ぐこと”が重要となる「幻想水滸伝 I&II」は,HDリマスターでダッシュ機能が標準化。もとよりテンポの良かったバトルも「倍速」が搭載され,スピードアップが可能になった。画像は「[プレイレポ]幻想水滸伝の原点,108人の英雄譚を再び。「幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争」
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 それは嬉しい変化だが,一方で“かつての体験”を追い求める者にとって,その快適さが体験の質を少し変えてしまう側面があるのも事実だ。

 かつてのゲームは,今と比べれば不便なものだった。ロードの待ち時間や,反応の鈍いカーソル操作。だが,そうした不便さの中に「次に何をするか考える時間」や,続く展開を際立たせる「溜め」も含まれていた。

 そうした不便さや退屈さもまた,作品世界とプレイヤーを深くつなぐ「のりしろ」だったのではないか。その余白が薄くなったことで,私たちはいつのまにか,体験そのものよりも,「滞らせない」ことを優先してゲームに触れているのかもしれない。
 リマスター作品で倍速モードを使い,戦闘を流し見しながら,心のどこかでそんな感覚を覚えたことはないだろうか。

 もっとも,それを選ぶ自由もまた,現代のゲーム体験の一部だ。すでにその作品と長く付き合ってきたプレイヤーにとっては,あらためて当時の余白を味わい直す必要はない,と感じることもあるだろう。

「幻想水滸伝 I&II」のHDリマスターでは,起動時に懐かしのローディング画面が再現されている。読み込みは速いため当時のような“間”はないが,かつてのゲームにあったものを感じさせる要素かもしれない
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 旧作ファンへのサービスとして用意された追加要素,たとえばシナリオ追加パートなども,当時の雰囲気を踏まえて作られているはずだ。
 それでも,自分の中にある「当時のイメージ」や「記憶の中のノリ」と,微妙なズレを感じてしまうこともある。

 そして,これについてはあくまでプレイヤー側の気持ちが強い話だが,快適になった結果,かえって遊ぶタイミングを先送りにしてしまうこともある。
 倍速モードや各種の快適機能をひととおり試したところで,「これだけ遊びやすいなら,いつでも楽しめそう」などと,気がつけば数年積んでしまったなんてことも起こりがちだ。

「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」で「LEGACY STYLE」と「NEW STYLE」両方を試し,「LEGACYは当時の感覚が戻るし,NEW STYLEは今馴染みのある操作感でそれぞれいい感じ」と一度満足してしまい,気が付いたら1か月寝かしていた……というのは本企画の担当編集氏談
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 ……と,筆者はそんなことを考えつつ遊んでいるのだが,リマスター作品における「快適さ」は,体験を薄めるどころか,むしろ輪郭をはっきりさせる瞬間もある。
 2025年にリリースされたリマスター作品の中にも,そんな手触りのものがあった。

 「Xenoblade Chronicles X: Definitive Edition」はリマスターに分類される作品だが,その内容は枠を大きく超え,リメイクに近いQoL改善が施されている。
 これにより,オリジナル版が体験の核として据えていた「探索による文明の拡張」や,「異なる文化が交差する感覚」が,よりダイレクトに味わいやすくなった。QoLの向上が単なる退屈の削減にとどまらず,作品が本来伝えたかった体験を前に押し出す効果を生んでいる。

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 本日発売されたNintendo Switch用ソフト「ゼノブレイドクロス ディフィニティブエディション」は,2015年にWii U向けにリリースされた「ゼノブレイドクロス」の決定版だ。新しくなったUIやシステムで,より遊びやすくなった本作のプレイフィールをお伝えする。

[2025/03/20 07:00]

 さらに,オリジナル版のラストから続く形で,結末にあたるシナリオが追加されたことも大きい。物語を終えたときの解釈は大きく変わり,この点も「実質的なリメイク」と感じさせる理由のひとつになっている。
 高橋哲哉氏が開発初期に構想していたとされる,よりストーリードリブンな形に近づいた結果なのかもしれないし,その後の作品作りを経てたどり着いた境地なのかもしれない。おそらく,その両方なのだろう。

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 「ゼノブレイドクロス ディフィニティブエディション」で描かれる,人類と世界の未来をめぐる壮大なSFのビジョン。Nintendo Switchで蘇った惑星ミラでの体験は,オリジナルを超えて“なぜここに降り立つのか”という問いに応えてくれるものだった。

[2025/05/31 09:00]

 「サガ フロンティア2 リマスター」は,「快適さ」とどう向き合うかについて,非常に自覚的な作りになっていると感じた。
 原作にあったバトルメンバーの制限や,成長の連続性の薄さといった要素は,現代的な快適化によって大幅に緩和されている。

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 本作が興味深いのは,その快適さを一方的に押し付けない点だ。
 等速,2倍速,4倍速と細かく切り替えられる速度設定により,印象に残る場面だけを等速で味わうといった遊び方もできる。プレイヤーが望めば,「時間の濃度」や「のりしろ」を自分で取り戻すことができる設計になっている。
 さらに,追加要素をすべてカットし,「オリジナル」相当の状態で遊ぶことも可能だ。

 快適さを用意しつつも,それに呑み込まれない選択肢を残す。その姿勢こそが,本作のリマスターとしての誠実さなのだと思う。

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 昨日(2025年3月28日)リリースされた「サガ フロンティア2 リマスター」は,1999年に発売された「サガ フロンティア2」を現在のプラットフォームでも遊べるようにしたHDリマスター版だ。新規エピソードやバトルキャラクターが追加されたうえ,ゲームシステムの改良も施されている。

[2025/03/29 12:00]

 リマスター作品の受け止め方が分かれるのは,快適化という「甘美さ」をどこまで許容するかという基準が,プレイヤーごとに異なるからだろう。
 「のりしろ」を味わいたい人もいれば,「退屈」をできるだけ遠ざけたい人もいる。その揺れこそが,リマスター作品をめぐるさまざまな声が生まれる理由なのだと思う。
 作品そのもの以上に,遊び手がこれまで積み重ねてきた体験や考え方が,そこに映し出されているように感じる。

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オリジナルを遊ぶこと,現代を映す鏡としてのリメイク/リマスター


 リメイクやリマスターについては,その在り方をめぐって,さまざまな場所でそれぞれの考えが語られている。だが筆者自身は,そうした輪の中に加わることはない。
 その代わりというわけでもないが,古いブラウン管モニタや旧ハードを処分せず,今も手元に置いている。なるべく「当時のまま」に近い環境を整え,ゲームを遊ぶためだ。

この機に乗じて(?),「フロントミッション オルタナティヴ」を久々に遊んでみたところ
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 それは確かに,懐古趣味の側面も少しはある。ただ,執筆のために当時の環境で遊び直すことも多く,その時代のプレイヤーが何を見て,どう考えていたのかを想像するうえで,大切な作業だとも感じている。
 当然,手間はかかる。床をうねるケーブルで部屋は散らかるし,準備だけでひと仕事だ。

 ――だが,それがいい。

 オリジナルを遊ぶことは,当時の技術的な制約の中で,クリエイターが何を表現しようとしていたのかを,世界の形そのものから確かめる行為だからだ。
 同時に,それを受け取った当時のプレイヤーの感覚に,あらためて触れ直すことでもある。

 そんなことを続けていると,実現性はさておき,リメイク/リマスターとは別に,オリジナルに近い形で原作ゲームに触れられる環境を,「公式」側が用意してくれたらありがたいのに,と思うこともある。
 それはわがままかもしれないが,作品の保存や継承の意味で,文化事業としての価値も持つはずだ。

こちらは「ドラゴンクエスト」誕生30周年の2016年5月に掲載したファミコン版「ドラゴンクエスト」をなるべく当時に近い環境でプレイしてみるという企画(リンク)のときの写真。ほぼ当時のままという移植作品はあるが,こんな風に“遊ぶ環境ごと”……というのも?
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30年前の今日発売されたファミコン版「ドラゴンクエスト」を,当時生まれてもいない編集者がプレイ。竜王を倒す旅は驚きと戸惑いの連続だった

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 本日(2016年5月27日),国民的RPG「ドラゴンクエスト」が誕生30周年を迎えた。そこで本稿では,シリーズの原点であるファミリーコンピュータ版「ドラゴンクエスト」を振り返ってみたいが,それだけでは少々味気ないので,発売時に生まれてもいない編集者が,時代の違いに戸惑いつつプレイしたレポートとしてお届けしよう。

[2016/05/27 00:00]

 もちろん,現代のリメイクやリマスターに距離を置きたいわけではない。実際,多くの作品を楽しんでいるし,むしろそれらは,私たちがいまどんな価値観の中でゲームを遊んでいるのかを映し出す鏡のような存在だと感じている。
 効率やタイムパフォーマンスを重視しがちな現代社会と,ゲームの「快適化」がどこかで結び付いていることも,そこから見えてくる。

 2026年以降も,こうした流れはしばらく続いていくのだろう。
 その中のひとつとして,筆者は2026年2月にリリースされる「ドラゴンクエストVII Reimagined」がどんな形で届けられるのかに注目している。
 オリジナルが持っていた,メロウで思索的でありながら,不思議と心を引きつける石板集めの旅は,現代の遊びやすさやテンポ感を考慮しながらどのような体験として再構築されるのか。その着地点を楽しみに見守りたい。

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[2025/11/20 00:00]

 どこまで快適さを受け入れるのか。どこまで過去の体験を大切にしたいのか。その線引きについては,人によって感じ方が違うし,簡単に答えが出るものでもない。
 それは正しいか正しくないかを決めるための話ではなく,それぞれが自分なりに,ゲームとどう向き合ってきたのかを確かめるためのものだ。
 ゲーマーたちはその揺れの中で,自分自身と,そしてゲームに向き合う誠実さや,作品への愛着を静かに重ね合わせているように思う。

 こうして振り返ってみると,「感動の追体験」という言葉ほど,愛しくて,だからこそ危ういものはない。
 スメアゴルの掌に握られた「ひとつの指輪」のように。

 リメイクやリマスターをプレイする“かつてのゲームを体験した”者たちは,再びあの感動に触れようとして,同じ道を歩き,同じ轍を踏み,同じ場面に心を動かされる。けれど,自分自身がもう“あのころの自分”ではないことも,どこかで分かっている。

 幻想だと知りながら,それでももう一度,同じ感動を味わいたいと願う。その気持ちこそが,ゲームに限らず,さまざまな文化が受け継がれていく理由なのかもしれない。
 過去を完全に再現することも,未来を正確に予見することもできない。だが,ボタンを押す「今この瞬間」,私たちはほんの少しだけ,時を越えることができる。

画像は「ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ」
画像ギャラリー No.034のサムネイル画像 / 名作のリメイク/リマスターが相次いだ2025年に考える。途切れることのなかった「感動の追体験」というファンタジー

 そもそも,いまリメイク元と呼ばれている作品も,かつては誰かにとってのオリジナルであり,衝撃的な「新作」だった。懐かしさの始まりは,いつだって未知の新しさから生まれている。そして今(2025年)の最新作が,20年後のゲーマーたちにとってクラシックとなり,「懐かしさ」を語られるゲームになる。

 だからこそ,この年の瀬に思う。
 これから生まれてくる「新しいゲーム」にも,触れていきたいと。

 リメイクやリマスターを通して過去に触れ,その流れの先で,エポックでオリジナルな作品と出会える1年になることを願いながら,ここに筆を置き,代わりにコントローラを握らせていただこう。

画像は「ゼノブレイドクロス ディフィニティブエディション」
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