
インタビュー
30分で1万年を味わえる”オムニバスADV「ショートショートフィクションズ」インタビュー。紅狐氏の作品に共通するテーマとは[BitSummit]
本作は,紅狐氏の個人サークル密輸水産が手がける短編ゲームを収録したタイトルだ。紅狐氏が過去にitch.ioで公開した「DON'T SAY YES」と「TO:NORTH」に加えて,書き下ろしのショートゲーム「IMMEMORIAL」,ゲーム同士をつなぐ新作アドベンチャーゲーム「LOST AND FOUND」が楽しめる。
今回4Gamerは,BitSummitの会場で紅狐氏にインタビューできたので,VODKAdemo?チームの一員として現在開発している「MINDHACK」を含めた,氏の作品に共通するテーマなどを聞いた。
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4Gamer:
本日はよろしくお願いします。「ショートショートフィクションズ」は短編ゲームを集めたタイトルとのことですが,どのようなきっかけで開発がスタートしたのでしょうか。
紅狐氏:
「ショートショートフィクションズ」に入っているタイトルは,もともと私が趣味で作っていた小規模なタイトルを,1つのゲームにした短編集なんです。
YESと言ってはいけないゲーム「DON’T SAY YES」,どうしても南に行けないアドベンチャー「TO:NORTH」は,私が個人サークルで趣味の一環として作っていたものです。それを見たroom6のまさし(room6社長 木村征史)さんが「まとめて1個のゲームとして出してみませんか」と言ってくださったことで開発が決まりました。
4Gamer:
キービジュアルにもいるゲーム機の「ニューウィー」がカセットテープで動くハードウェアだったり,収録されているゲームがピクセルアートを使ったレトロなものだったりするのは,紅狐さんの趣味なのでしょうか。
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紅狐氏:
もともと小さいころから,自分の年齢よりも一回り前くらいの世代のものにすごい憧れがあったんです。
たとえばの小学生のころは,学校から帰って「ナイトライダー」のような1980年代のドラマの再放送をよく見ていましたし,よく遊ぶゲームも自分の親世代が遊ぶようなレトロなゲームを好んでプレイしていました。
4Gamer:
「ナイトライダー」をご覧になられていたと聞いて納得しました。確かに「ニューウィー」もナイト2000のように喋りますね。
紅狐氏:
そうなんですよ。あのあたりは,まさに私の趣味趣向が表れているところですね(笑)。
4Gamer:
BitSummit会場で本作に収録されている「DON’T SAY YES」をプレイしたのですが,短いながらも話の展開が二転三転するのが,とても印象的でした。
最初は「生命の危機にあるパイロットと,命を助ける代わりに身体を乗っ取ろうと誘惑してくる卑劣な悪魔」というイメージだったのが,話が進むにつれてどんどん変わっていくという。
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紅狐氏:
このゲームは「30分で1万年を味わえる」というキャッチコピーをつけているんですが,遊んでくれた方に壮大な体験をしてもらおうと思って作っているんです。
現代人は皆さん忙しいですし,いろいろなゲームがどんどん出てくる。そんな時間のないなかで使ってくれた30分で,長編小説を読んだくらいの満足感を得てもらいたいなと。
4Gamer:
なるほど。
紅狐氏:
あと私は,レイ・ブラッドベリや星 新一が書いたようなSF短編小説がすごく好きなんです。
「ショートショートフィクションズ」には,「LOST AND FOUND」という各作品を橋渡しするアドベンチャーゲームを新しく入れているんですが,これはレイ・ブラッドベリの短編集「刺青の男」に影響を受けています。刺青の男も短編それぞれをつなげる構造になっているんですが,そういうものをゲームにも取り入れたいと思ったんです。
まさしさんに誘われたとき「せっかく作るんだったら,話をつなげるもう1つの物語を作りたい」と伝えたところ,「LOST AND FOUND」のパートを入れることになりました。
4Gamer:
「ショートショートフィクションズ」というタイトルのとおり,紅狐さん自身も短編小説がお好きだったんですね。「DON’T SAY YES」で感じた読み始めた直後と,読み終えたあとで登場人物に対する印象がまったく違うという点は,星 新一のショートショートに通ずるものがありますね。
紅狐氏:
はい。私の関わったゲームは「人を見た第一印象と,本人が抱えている心の中は違う」という二面性やギャップを表現するというテーマを共通して持っています。
たとえば,現在開発中の「MINDHACK」では,ユーニッドというトゲトゲしたウニみたいなキャラクターが出てきます。見た目は悪そうなんですが,彼の心をのぞいていくと,実はとても繊細な側面があったり,彼自身の過ごしてきた人生があったりして,意外な側面が見えてきます。
「ショートショートフィクションズ」でも,ゲームに登場する人物のもう1つの側面が見られるようになっているんです。
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4Gamer:
その部分は,紅狐さんの作家性といっていいものだと思うのですが,そうしたテーマを書こうと思った理由やきっかけはあるのでしょうか。
紅狐氏:
おそらく自分の体験によるものが大きいと思います。私はけっこう体が小さくて,第1印象で可愛いものが好きな人だと思われることが多いんです。
ただ,私が実際に好きなものって「メトロイド」だったり,バリバリのハードコアなFPSだったりするんですよ。こういうことを人に話すと決まって「意外だね」と言われるんですよね。
そうした人から見た認識と,自分はこう思われたいという理想が食い違う経験が多かったことが,今の作風につながっているんじゃないかと思います。
4Gamer:
ショートショートフィクションズには,「DON’T SAY YES」「TO:NORTH」という紅狐さんが手がけた過去の作品以外に,書き下ろし作品の「IMMEMORIAL」が収録されるとのことですが,そちらのタイトルも二面性を描く作品になっているのでしょうか。
紅狐氏:
そうですね。詳しい内容はまだお伝えできないのですが,ショートショートフィクションズのゲームは,「つらく,しんどく,美しい」という密輸水産のキャッチフレーズに基づいて,「YESと言ってはいけない」とか「南に行けない」とか「〇〇ない」というテーマにしたタイトルになっています。
そのなかで,「IMMEMORIAL」の主人公は「過去を思い出せない」という人物になっています。「IMMEMORIAL」という単語も,思い出せないほど遠い昔という意味の単語なんです。どんな物語が展開されるか,どのような形で登場人物の二面性を描くかなどは,ぜひプレイして確かめてほしいですね。
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4Gamer:
発売を楽しみにしています。最後に読者に向けてメッセージをお願いできますか。
紅狐氏:
このゲームの開発が決まったのは,「DON’T SAY YES」「TO:NORTH」を気に入ってくださった方々が広めてくださったおかげだと思っています。本当にありがとうございます。
また,ショートショートフィクションズを初めて知ったという方にも,楽しんでいただけるタイトルにしたいと思っておりますので,楽しみにしていただければと思います。
4Gamer:
ありがとうございました。
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「BitSummit the 13th」公式サイト
4Gamer「BitSummit the 13th」まとめページ
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(C)room6 / 密輸水産