
イベント
「Sword Sage: Awakening」開発者プレゼンテーション。精鋭チームが挑む,中国武術×スチームパンクの野心的な設計思想[gamescom]
7月に上海で開催されたBiliBili World 2025でプレイアブル展示が行われ,4Gamerでも試遊レポートを掲載しているが,今回は開発を担当するYu Yi氏とSheng Lyu氏が,ゲームの設計思想や開発の舞台裏について,より深い部分まで語ってくれた。
![]() |
プレゼンテーションの冒頭で,Yi氏は本作がソウルライクではないと明言した。確かに,昨今のアクションRPGでは「ソウルライク」というジャンルが確立され,多くのタイトルがその影響下にある。しかし「Sword Sage: Awakening」は,あえてその流れとは異なる道を選んだという。
従来のソウルライクゲームが回避,ブロック,防御,パリィといった守備的なアクションを重視するのに対し,本作は「身体の動き」そのものに焦点を当てている。この言葉の意味は,実際のゲームプレイを見れば一目瞭然だ。主人公の三娘(サン・ニャン)は,まるで舞踊を踊るかのような優雅な動きで敵の攻撃をかわし,流れるような剣技で反撃する。
![]() |
特に印象的なのは,中国の伝統的な武術の動きを忠実に再現している点だ。中国武術の真髄は力任せの攻撃ではなく,身体全体を使った流麗な動きにあり,特に女性武術家の動きは優雅さと力強さが絶妙に融合しているとYi氏は熱く語った。
BiliBili Worldの試遊記事でも言及した双剣システムについて,今回はより詳細な説明がなされた。プレイヤーは2本の剣を同時に装備し,リアルタイムで切り替えながら戦う。ここまではほかのゲームでも見られる仕様だが,本作独自の要素として「持続時間」という概念が導入されている。
剣には持続時間が設定されており,使用し続けると減少していく。特に防御を頻繁に行うと,持続時間の減少が加速するという仕組みだ。つまり,守備的なプレイスタイルを取ると,剣の切り替えを頻繁に行わなければならなくなる。これは「身体の動きで回避する」という本作のコンセプトを,システム面からも補強する巧妙な仕掛けといえるだろう。
![]() |
さらに興味深いのは,剣の種類によって戦闘スタイルが大きく変化する点だ。同じ技でも装備している剣によってモーションや効果が変わるため,プレイヤーは自分の好みに合った剣の組み合わせを見つけ,独自の戦闘スタイルを確立できる。
本作の戦闘哲学を端的に表す言葉として「青を避け,赤を斬る(Evade Cyan, Strike Red)」というフレーズが紹介された。これは単なるキャッチコピーではなく,実際のゲームシステムに深く根ざしたコンセプトだ。
敵の攻撃は青と赤の2種類に色分けされており,青い攻撃は回避すべきもの,赤い攻撃はカウンターのチャンスを示している。この色による視覚的なフィードバックにより,プレイヤーは瞬時に適切な行動を判断できるようになっている。
また,道術と呼ばれる魔法要素も戦闘では重要だ。近接戦闘だけでは単調になってしまうため,炎や雷といった派手な効果を持つ道術を組み合わせることで,戦闘により深みが生まれる。遠距離攻撃としての機能だけでなく,コンボの起点や締めとしても活用できるという設計だ。
![]() |
本作の舞台は,三国時代をベースにした架空の都市だが,そこにあるのは歴史的な街並みではない。金属の大地,機械仕掛けの建造物,蒸気を吐き出す巨大な装置――スチームパンクの要素が随所に散りばめられている。
純粋な歴史ものや武侠ものにすることもできたが,それでは既存の作品との差別化が難しい。スチームパンクという西洋的な要素を加えることで,東洋と西洋,過去と未来が交錯する独特の世界を作り出すことに成功した。
この融合は単なる見た目の奇抜さを狙ったものではない。現代のプレイヤーは純粋なファンタジーよりも,現実と幻想が混在する世界設定に魅力を感じる傾向があり,スチームパンクという要素はその橋渡しとして機能しているのだという。
キャラクターの成長要素として「徳」システムが採用されている。戦闘や探索を通じて獲得した徳ポイントを使い,スキルツリーで新たな能力を開放していく仕組みだ。
攻撃特化,防御特化,バランス型など,プレイヤーの好みに応じて自由にカスタマイズでき,人によってまったく異なる体験ができる。さらに,習得したスキルによって戦闘中のモーションも変化するため,見た目の変化も楽しめるという充実した作りになっているのだ。
アクションゲームというと難しそうだと敬遠する人もいるが,本作はその点にも配慮がなされている。開発チームの目標は,初心者から上級者まで,あらゆるレベルのプレイヤーが楽しめるゲームを作ることだという。
具体的には,初心者でもクリアできる基本的な難度を確保しつつ,上級者には「パーフェクトアクション」という要素で挑戦しがいを提供する。タイミングよく回避や攻撃を成功させることで,特殊効果や追加ダメージなどのボーナスが得られるという。
コアゲーマーでなくてもクリアできる一方で,上達すればするほど,より派手で爽快な戦闘を楽しめる。この設計により,プレイヤーは自分のペースで成長し,徐々により高度なアクションに挑戦できるようになっている。
![]() |
開発を手がけるSword Pandaは,わずか20人という少人数のチームだ。しかし,そのメンバー構成は豪華だ。創業者は20年以上のゲーム開発経験を持ち,Ubisoftでの勤務経験もある。ほかのチームメンバーのほとんどが大手ゲーム会社出身で,少数精鋭という言葉がぴったりの布陣となっている。
本作はAA(ダブルエー)タイトルとして位置づけられており,メインクエストは約15時間,サイドクエストを含めると最大20時間程度のボリュームになるそうだ。超大作と比べれば控えめな規模かもしれないが,その分密度の濃い体験を提供することに注力しているという。
驚くべきは開発スピードだ。開発開始からBiliBili Worldで披露されたデモ版までは数か月で制作された。この規模のゲームをそこまで早く作ることは困難だが,経験豊富なメンバーが集まっているからこそ,効率的な開発が可能になっているのだろう。
サイドクエストを含めると最大20時間程度のボリュームになるそうだ。まだ未完成な部分が多いと開発陣は率直に認めている。しかし,リリースまでにはさらに磨きをかけ,今後のゲームイベントではより完成度の高いバージョンを披露する予定だという。
最終的なリリースは2025年内を予定しており,全体の開発期間は約1年半となる見込みだ。対応プラットフォームはPC(Steam,Epic Games Store,GoG)で,英語,ロシア語,中国語(繁体字・簡体字),日本語,韓国語などに対応する。
プレゼンテーションの締めくくりとして,開発チームは小さなチームながら大きな夢を持っていること,中国の美しい文化と現代的なゲームデザインの融合を世界中のプレイヤーに体験してもらいたいこと,そしてこのゲームが新しいアクションRPGの可能性を示す作品になることを願っていると語った。
伝統と革新,東洋と西洋を巧みに融合させた本作が,どのような完成形で我々の前に現れるのか。中国発の新たなARPGの誕生に,今から期待が高まる。
![]() |
4Gamer「gamescom 2025」掲載記事一覧
「gamescom 2025」公式サイト
- 関連タイトル:
Sword Sage: Awakening
- この記事のURL: