
インタビュー
ゲーム開発・販売バラエティ番組「電脳遊戯最高会議」,FODで本日配信開始。約1か月での開発に挑んだ中道慶謙さん,けんきさんにインタビュー
この番組では,2人のクリエイターが約1か月でゲームを開発し,議長(俳優の大和田伸也さん)とエージェント(人気ストリーマー)たちによるジャッジを受ける。そしてゲーマーが見逃せないのは,そのゲームがSteamで配信されることだ。
番組とともに配信が開始されたそのタイトルは,中道慶謙さんの「Tree Party!」と,けんきさんの「Liar Zoo Game」。「Tree Party!」は「緑の大切さを知らしめるゲーム」,「Liar Zoo Game」は「フェイクニュースを見破れるようになるゲーム」というテーマにそって開発されたもので,いずれも2人のプレイヤーによる対戦ゲームとなっている。
![]() 中道慶謙さん |
![]() けんきさん |
本稿では,収録現場で明かされた両タイトルの概要を,中道さんとけんきさんへのインタビューとあわせてお届けしよう。なお,収録後もリリースに向けた調整が行われるとのことだったので,仕様に若干の違いが発生している可能性がある。その点についてはご了承いただきたい。
Tree Party!
「木を育てる人」と「木を切る人」による対戦ゲーム。植樹スペースが長方形に並べられており,その内側にいる「木を育てる人」が,それぞれのスペースに「苗を植える」「水をやる」という2つのアクションを行うと木が育つ。植樹スペースの外側にいる「木を切る人」は,そうやって手間暇かけて育てられた木をバッサリ切っていく。
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このような木を巡ってのいたちごっこを繰り返し,残り時間がなくなった時点で,より多い本数を育てた/切ったほうの勝利,というのが基本ルールだ。完全に育った木でないと切ることはできないので,育てる側はまず苗を植えたあと,相手の様子やスコアの状況を見ながら水をやることになるだろう。
ただし,画面中央上にある大木が切り倒されると,その時点でゲームが終了となる。大木だけに簡単には切り倒せないが,切る側はある程度大木の伐採作業を進めておき,リードしたら一気に切り倒す,という進め方が定石になりそうだ。
その防衛手段として,育てる側に用意されているのは,大木を守る「ロボット」。木を育てるのに夢中にならず,大木の様子を気にかけておき,必要になったらロボットを稼働させよう。
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このように,2人が移動できるスペースや,やるべきことが異なるため,2人のプレイヤーキャラが直接戦うようなことはないのだが,そんな本作を対戦ゲームらしくしているのが,「切り倒された木をキックして相手にぶつける」というアクションだ。見事ヒットさせれば,相手はしばらく行動不能になり,自分の作業に集中できる。
さらに,ゲームの終盤になると,キックされた木が画面内を激しく跳ね回るようになり,その本数が増すごとにゲームはカオスと化していく。ここをうまく切り抜けられないと,リードしていてもあっという間に逆転されそうだ。
筆者の率直な感想としては,「あえて木を切る側を若干有利にしているのかも」といったところ。もちろん育てる側もプレイ次第で勝利は可能だが,「苗を植える」「水をやる」という2アクションと,「木を切る」の1アクションの差があるし,切る人には制限時間前にゲームを終了させる手段があるのも大きそうだ。
ただ,その“伐採優位”が現在の森林破壊問題を表してもいるようで,興味深い。説得力のある世界観での「1対1の非対称型対戦ゲーム」として楽しめそうだ。
●「Tree Party!」開発者の中道慶謙さんインタビュー
4Gamer:
収録でお疲れのところ,ありがとうございます。「電脳遊戯最高会議」は,1か月でゲームを作って,しかも販売するという番組ですよね,素人目線だと「そんな短い時間で作れるのか?」と思うくらいなのですが,最初にお話を聞いたときはいかがでしたか。
中道さん:
いや,長いと思いましたよ。
4Gamer:
そうなんですか!?
中道さん:
48時間でゲームを作る様子をカメラ回しっぱなしで配信する企画をやったことがあるくらいなので,むしろ「48時間じゃなくてよかった」ぐらいで(笑)。
それ以外にも,モックとかアルファ版のようなものを,2日くらいで作ってはダメだみたいなことをよくやっていますから,結構余裕あるなっていうのは本当に思ったんです。スタッフの方は,僕のことをちゃんと調べてからオファーされたんだと思います。
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4Gamer:
中道さんは学生時代に,SNSで見た情報からゲーム開発に興味を持って,プログラムなどの知識もないまま開発を始めたそうですが,具体的にはどんなものを見たのでしょうか。
中道さん:
Unreal Engineで球体を動かすようなデモでした。それを見て「そんなに簡単なんだ」と思って,実際やってみたら,本当にめっちゃ簡単で。今回の「Tree Party!」でも使った「Blueprint」※は,“ボタンを押したらこう動く”みたいなものがあらかじめ用意されていますから,ゲームとしてのギミックがある程度できているような感覚で,とっつきやすかったですね。そこからどんなゲームを作ろうかという想像が膨らんでいきました。
※Unreal Engineに用意されているプログラミング言語の1つ。さまざま機能のブロックを線でつなぐようにしてコンピュータに指示を出すもので,コードを書く必要がない。
4Gamer:
中道さんは番組の中で,特に子どもたちに向けて,ゲーム作りは簡単だからやってみてほしいと話していましたが,そういったツールを使ってみての実感なんですね。
中道さん:
はい。子ども向けのプログラミング言語としては,「Scratch」が有名ですけれど,その半歩先は,もう「Blueprint」です。もちろん,コードを書こうとすると,そこから遥か彼方の月を目指すぐらいの距離になりますが,「Scratch」と「Blueprint」は本当に近くて,視覚的に分かりやすいです。
4Gamer:
そうやって,ちょっとしたきっかけで始めたゲーム開発を仕事にするというのも,なかなかの思い切った決断だと思いました。
中道さん:
大学の先輩たちから,「好きと仕事が合致するものを探そうよ」とアドバイスされていたのが大きいですね。やっぱり「好き」と「仕事」ってなかなか一致しなくて,大学のみんなもそこで苦しんでいました。僕は神経科学で脳の研究をしていたんですが,博士号を持っている先輩たちも,研究がなかなかお金につながらなくて,バイトや借金をしないとやっていけないような感じで。
4Gamer:
研究だけでは食べていけない,というのは,よく聞く話ですね。
中道さん:
自由に学べる大学に通っていたこともあって,本当にいろいろやっていたんですが,その中でゲームを作ってみて,「めっちゃ面白い!」「なんでも作れるじゃん!」となって。コンセプト段階のものをSNSにアップしたら,そちらもバズって「早く遊びたい!」みたいなメッセージがたくさん届いたんです。そういう期待に応えたいと思って,大学を休学してゲーム作りに集中することにしました。
4Gamer:
それが現在まで続いているんですね。中道さんは基本的に1人での開発を続けられていますが,1人のメリットとデメリットって,実際のところはいかがでしょうか。
中道さん:
僕にとってはメリットのほうが大きいです。やっぱり,コミュニケーションコストが大変なんですよね。1人なら,「ここがこうなると面白い」というアイデアをそのまま形にできますけれど,誰かに伝えるという工程を挟むと,思っていたものとは違うものになることがありますし,それを避けるためにテキストを書いたり資料を作ったりするのにも,めちゃくちゃ時間かかるじゃないですか。
4Gamer:
分かります。「それなら自分でやったほうが早い!」となっちゃいますよね。
中道さん:
「感覚でこうしたい」というときも,伝えるのが難しいです。今回の「Tree Party!」には,ゲームの終盤に蹴った木が跳ね返るシステムがありますけれど,あれも最初は「『ボンバーマン』の最後のワチャワチャ感が欲しい」という発想なんです。誰かにそれをそのまま言っても,なかなか伝わらないし,作れないですよね。
4Gamer:
形になったものを見ると,確かにワチャワチャ感があって納得できるんですが,何もないときにそれを言われたら,ちょっと困りそうですね。
では,中道さんが作るゲームの特徴,ユニークな部分はどこになるでしょうか。
中道さん:
これはあくまで僕の考え方だけの話になるかもしれませんが,僕は,自分が作りたくて作ったゲームを遊んでくれる人,それでハッピーになってくれる人がいてくれたら,それでいいんです。インディーゲームの開発といってもいろいろなパターンがありますよね。生計を立てるとか,より多くの人にアピールしたいとか。
4Gamer:
そうですね。大きなゲームメーカーのタイトルだと,ほとんどは売り上げや利益を出すというところになりそうですが,インディーの場合は,それ以外にも開発者の趣味であったり,自己表現だったり,なにかの広告的な意味合いを持つものだったりと,さまざまだと思います。
中道さん:
たとえば,多くの人に届くことを意識して企画を立てることは重要です。もちろん僕もそういった視点を持って制作していますが,最初の動機としてはやっぱり「自分が本当に面白いと思えるかどうか」が軸になっている気がします。だからこそ,身近な友達が僕の作品を遊んで「楽しい」と言ってくれたら,それだけでもすごく満足できるんです。
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4Gamer:
「Tree Party!」の開発でアイデアに煮詰まったとき,公園に行って子供たちが遊ぶ様子を眺めるシーンがありましたが,友達のような,近くにいる人たちとの関係性が原点になっているのでしょうか。
中道さん:
そうですね。誰か1人でも楽しんでもらえる,笑ってもらえるならと思って,僕が出しているゲームは途中から全部無料にしちゃったんです。目指しているのは「ゴッドフィールド」みたいなゲームですね。もちろん収益もあるとは思いますが,無料でプレイできますし,「暇だからみんなでやろうよ」といった感じで遊んでもらえる存在になりたいです。
4Gamer:
「Tree Party!」の開発を追った映像からは,順調にスタートしたにもかかわらず,途中でかなり悩まれている様子がうかがえました。
中道さん:
いつも見切り発車なんですよ。仕様書も作りませんし。
4Gamer:
1人ですから,自分の頭が仕様書みたいなものですよね。
中道さん:
いえ,何なら頭の中にもないんです(笑)。今回は「緑の大切さを知らしめるゲーム」がテーマでしたけれど,木を植えたり切ったりで競わせよう,ぐらいのアイデアしかない状態でプログラムを組んで,友達を呼んで遊んでみたら,まぁ面白くない。単調な作業の繰り返しですからね。それで,これはまずいぞ,さぁどうしようと悩み始めるというか。
4Gamer:
まず作ってから考えるんですね。サクっと作ってしまう行動力にも驚きますが。
中道さん:
さきほど話に出た公園に行ったときは,本当に悩んでましたね。なんとかしてゲーム性を出さなきゃいけないと……。ただ,面白くないゲームであっても,ちょっと面白い瞬間があったりするんです。
4Gamer:
それはどんなときでしょうか。
中道さん:
今回だと,友人を呼んでオフラインでテストプレイをしていたときにありました。2人とも長時間プレイして疲れていたので,テストじゃなく遊びになっていって,隣にいる相手を物理的に邪魔し合うようになって(笑),それがちょっと面白かったんです。そいういうスパイス的なことを見つけて,ゲーム内で起こるようにしようという作り方でした。
4Gamer:
なるほど。素人目線だと,「木を植える,切る」とは別の方向に切り替えないのかなと思ったりもするのですが,そうはしなかったんですね。
中道さん:
そうですね。単純にそれ以外思いつかなかったというところもありますが,それ以上に,対戦という形式を崩したくなかったですね。実は今回対戦ゲームにしたのも“ズル”だと思っていて。極端な話をすれば,人との対戦は,ボールを投げ合っているだけでも楽しくなれるんです。だからそこは崩したらやばい,完成しないかもと思っていました。
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4Gamer:
あぁ,散々遊んで飽きたゲームでも,友達との対戦になると面白い,というのはありますね。そうやって開発した「Tree Party!」ですが,どんなふうにプレイしてもらいたいですか。
中道さん:
親戚の子供が「頑張って作ってきたよ!」と言いながら持ってきたゲーム,ぐらいのテンションで,番組とセットで楽しんでほしいですね。何を目的に,どうやって作ってきたのか……といったストーリーまで含めて見てほしいですし,実際にプレイして,さらにはご自身でもゲームを作ってみて,「ゲーム作りってこうなのか」と共感してもらえたら嬉しいです。
今回のゲーム作りでは,単に面白さを追求するだけではなくて,さらに違う視点での楽しみ方も作れたのかなと思っていますので。
4Gamer:
なるほど,開発のエピソードを知ったうえでプレイすると,映画のオーディオコメンタリーみたいで面白そうですね。中道さんの話を聞いて,自分も「ちょっとBlueprintを触ってみようかな」と思い始めました。本日はありがとうございました。
Liar Zoo Game
動物の捕獲をめぐって,2人のプレイヤーが対戦するカードゲーム。「動物園からライオンが逃げ出した」というフェイクニュースがSNSで拡散された実際の事件をモチーフにしているという。
対戦は,2人のプレイヤーが攻撃側(動物を逃がす)と防御側(動物を捕まえる)を3ターンずつ交互にプレイし,お互いのライフを削っていく形で進行する。相手のライフを削りきるか,双方の攻撃用カードがなくなった時点のライフが相手より多ければ勝利だ。
逃がす側の手札は,攻撃力2の「ライオン」2枚,攻撃力1の「シマウマ」2枚,攻撃力0の「ネコ」1枚の計5枚。一度使ったカードは使用不可となる。
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一方の捕まえる側は,防御力2の「麻酔銃」,防御力1の「縄」,防御力0の「素手」の3枚。こちらのカードは何度でも使用できるが,再使用には防御力と同じ数のターンがクールダウンタイムとして必要になる。
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お互いがカードを1枚ずつ出し合い,逃がす側の攻撃力が捕まえる側の防御力を上回れば,その差分が捕まえる側のライフから引かれる。プレイヤーに設定されているライフは3なので,早ければ2ターンの攻撃で相手を倒せる計算だ。非常にシンプルで,相手が出してくるカードを予想しやすいうえ,ゲームが進むにつれてそれをさらに絞り込めるルールと言えるだだろう。
例えば,捕まえる側のプレイ時に「麻酔銃」「縄」の順でカードを出してしまうと,その次のターンではクールダウンタイムが足りないため,「素手」を出すしかなくなる。攻撃力がそのまま通ることが相手に分かってしまう大ピンチになるわけだが,それを嫌って「麻酔銃」の次に「素手」……と考えることは相手も予想するだろう。
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このように,本作の魅力は「理詰めのしやすさから来る心理戦」となりそうで,それを踏まえると,お互いの性格が分かっている2人でプレイするのが一番面白いだろう。最終的な勝敗はもちろんだが,ブラフや煽りを繰り返しては「読み切った!」「読まれた!」と,ターンごとにひと盛り上がりできそうなゲームだ。
●「Liar Zoo Game」開発者のけんきさんインタビュー
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。「電脳遊戯最高会議」は,約1か月でゲームを作って,それを販売するという,これまでにない番組になりそうですが,最初に出演の話を聞いたとき,どんなことを思いましたか。
けんきさん:
時間が非常に短いので,なかなか難しい条件でのゲーム制作になるとは思いました。
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4Gamer:
さすがにそうですよね。ただ逆にいえば,無理だとは思わなかったと。
けんきさん:
開発にかかる時間は,単純にどれだけ機能を実装するか,どんなゲーム性にするかというところで大きく変わるので。「グランド・セフト・オート」みたいな,広大な世界にいろいろな遊びを詰め込むには年単位の時間が必要ですけれど,小さな空間,シンプルなゲーム性であれば,1カ月でも十分現実的かなという。
4Gamer:
けんきさんはプロゲーマーとして活動しているかたわらで「Project F」をリリースされましたが,開発を手がけることになったきっかけは何だったのでしょうか。
けんきさん:
プロとしてFPSを長くプレイしていると,「もっとこうだったらいいかな」「もっとこうあってほしい」といった思いが出てくるんです。それを実現する方法として,じゃあ作ってみればいいんじゃないか,と思って,ゲーム制作チームを編成しました。
4Gamer:
プレイしながら「こうだったらいい」と思うゲーマーは多いと思うのですが,それをすぐ実行に移してしまえる人はそういないですよね。開発の模様を追ったVTRでは,けんきさんがプレイヤー目線で考えているという印象を受けたのですが,けんきさん本人としてはいかがですか。
けんきさん:
それはあると思います。もちろん,ほかの開発者の方にプレイヤー目線がないと思っているわけではありません。ただ現実問題として,ゲーム開発って,膨大な時間が必要になることもあって,僕が今までお会いした開発者からは,あまりプレイができてなくて,開発に専念している印象を受けることが多かったんです。
4Gamer:
あぁ,確かに「仕事が忙しくて,最近のゲームは遊べていないんです」とこぼす開発者は一定数いると思います。
けんきさん:
なので,僕は実際の作業ではなく,ゲームの企画部分の打ち合わせとか,プロモーションに時間を使うようにして,広い視野で開発を見る存在になりたいとは思っていますね。
4Gamer:
採算度外視というわけじゃないんですが,ゲーム開発者の視点だと「これはコストに見合わない」と感じるようなものも,プレイヤー目線で「何としても入れよう」となったりすることもあるんでしょうか。
けんきさん:
そうですね。そこはまさに開発チームを立ち上げてゲームを作る中で痛感した部分なんです。プレイしながら「ここをこうすればいいのに」と思っていたものを,いざ開発チームでやろうとすると,予想以上のコストがかかることが分かって,それを実装したところでコスト以上の売り上げが見込めるのかと……。
そういうシビアな部分見えてきて,改めて,それまでプレイしていたゲームのすごさに気づく,ということもありました。
4Gamer:
やっぱり,その立場にならないと分からないことってあるんですね。
けんきさん:
とはいえ,自分自身は「ゲームでお金を儲けたい」という考えで始めたわけではありません。なので,「Project F」でも,技術面での妥協はいくつかありますが,採算的な部分での妥協は極力していません。自分の夢に向かって頑張って稼いだお金を,高級車とかブランド物の時計とかいったものではなくて,自分で作るゲームに使いたいと思ったんです。
4Gamer:
そういうゲーム作りは1つの理想だと思いますし,作っていて楽しいんじゃないかなと思いますが。
けんきさん:
楽しいのは楽しいです。……ただ,そういうゲームは“異端”になりますし,自分自身への注目もあるので,無料ゲームとしてのリリースではありますが,責任はすごく感じます。「Project F」は,2週間だけサーバーをオープンして,その後長めの時間を開発に充てて,また2週間オープンするというスケジュールで進めていますが,シーズンごとにさまざまなメッセージをいただくので,それがプレッシャーにもなりつつ,全体的には楽しいという感じですね。
4Gamer:
そのスケジュールも,なかなかほかのタイトルでは見ないものですよね。
けんきさん:
あれは,「規模の小さなインディーゲームであっても,Steamでリリースされた瞬間に,AAAタイトルを含むすべてのゲームと戦わなきゃいけない」という厳しい現状を打開できないかと,僕なりに考えて出した答えなんです。
4Gamer:
「運営と開発を同時に行うには人が足りないのかな」ぐらいに思っていたんですが,戦略的な意味があったんですね。詳しく聞かせてもらえますか。
けんきさん:
インディーゲームって,今まで見たこともないようなアイデアで作られたものが,年に何十本も出ていると思うんですが,最初こそちょっと話題になっても,多くは1か月,2か月と経つうちに遊ばれなくなっていきます。アイデアはよくても,クオリティ面ではAAAタイトルに太刀打ちできないところがありますから。
4Gamer:
確かにそうですね。
けんきさん:
その結果,インディーゲームにはいろいろな制約が生まれているんです。例えばシングルプレイのタイトルが多くなっているのもその1つです。
4Gamer:
長期間の運営を前提としたマルチプレイタイトルは,いろいろな意味でインディーデベロッパにはハードルが高いですしね。
けんきさん:
ただ,毎日遊べる状態だったら後回しにされてしまうかもしれないけれど,「この1週間しか遊べないゲーム」なら遊ぼうと思ってくれるんじゃないかなって。実際,新作ゲームのβテストには,多くの人が集まるわけです。
4Gamer:
なるほど。確かにβテストは開発中のもので,クオリティの面では完全ではありませんし,そのゲームをよく知らない人がほとんどのはずですが,多くのプレイヤーがゲームのほうに予定を合わせて参加しますね。
けんきさん:
それを実現したいって思っているんですね。もちろん,毎回のプロモーション費用をどうするのかという問題はあります。ただ,僕の立場であれば,日本国内,特にゲーム界隈に向けてのプロモーションは,ほぼ無料で効果的に行えます。
これが成功事例になれば,ほかのインディーゲーム会社が続いたり,メディアが取り上げたりといった動きも出てくると思うので,これまで継続性の点で見送られていたインディーゲームがリリースされることにつながればいいなと思っています。
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4Gamer:
そこまで見据えたうえでのゲーム開発なんですね。話を「電脳遊戯最高会議」に戻したいのですが,今回けんきさんが開発した「Liar Zoo Game」は,最初のアイデアが出るまでかなりの時間がかかりましたね。それでもけんきさんに焦る様子がないのが印象的でした。
けんきさん:
僕自身が手を動かすわけではないのですが,開発者の方達とお話ができるよう,勉強は日々しているので,このゲームの仕様であったら実装にどのぐらいの時間や費用がかかるのかといったことは,自分の中で見えるようになりました。
それに,僕としては最初の設計段階が一番重要だと思っているので,そこをしっかり詰めたほうが結果的には早いと考えていました。焦って最初にとりあえずのゲームを出してしまうと,作業的な面で効率が悪くなりますから。
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4Gamer:
まず簡単なゲームを作ってみて検討する,という手法もあるとは思いますが,今回はそれをしなくても大丈夫と判断したと。
けんきさん:
そのやり方は,おそらく「このゲームはそもそも面白いのか?」ということを探るためのものだと思います。今回は,絶対期日までに開発を終わらせる必要がありましたし,信頼できる優秀な2人のスタッフもいて,自分の中では安心というか,確実にできるという思いもありましたので。
4Gamer:
チームとしての絆の強さは,映像からも伝わってきました。そろそろお時間のようなので最後になりますが,「Liar Zoo Game」をプレイする人に向けてのメッセージをお願いします。
けんきさん:
ぜひ駆け引きの部分を楽しんでほしいですね。5人や3人でプレイするチーム対戦のゲームで,フレンドが来るまでのあいだにプレイすると,盛り上がると思います。
4Gamer:
あぁ,仲がいい人との読み合いは楽しそうですね。本日はありがとうございました。
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