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[インタビュー]“声をかけられると爆発するキリン”が話題に―――「コミュ障キリンの一週間」は,アメリカとアジアの感性の融合だった
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印刷2025/08/26 12:00

インタビュー

[インタビュー]“声をかけられると爆発するキリン”が話題に―――「コミュ障キリンの一週間」は,アメリカとアジアの感性の融合だった

 2025年8月,韓国・釜山で開催されたインディーゲームイベントBIC Festival 2025には,厳しい選考を勝ち抜いた素敵なインディータイトル達が出展されていたわけだが,その中でも注目を集めていたタイトルが,この「コミュ障キリンの一週間」PC)だ。
 先のBitSummitにも出展されていた本作は,極度の対人ストレスを抱える“キリン”を主人公に据えた,ユニークなインディーアドベンチャーゲームだ。日常の些細な人間関係に翻弄されながらも,どこかユーモラスに描かれていて殺伐としないその世界観に,日本のプレイヤーからも共感の声が続出しているとのこと。

※ちょうど2025年8月11日に,デモ版に日本語対応のアップデートが当たったばかりのタイミング
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 京都市勧業館みやこめっせにて,2025年7月18日から20日まで開催されている「BitSummit the 13th Summer of Yokai」。会場のQuail Buttonブースに,ユニークなアドベンチャーゲーム「コミュ障キリンの一週間」が出展されていたので紹介したい。

[2025/07/19 15:32]

4Gamer「BIC2025」記事一覧

「BIC2025」公式サイト


 開発を手がけたのは,ロサンゼルスを拠点とする3人組の小規模スタジオ。アートディレクターのLin Huang氏は台湾出身で,アニメーターとしての経験とアジア的な感性を持ち合わせながら,アメリカ的なミッドセンチュリーモダンのデザインと,日本のアニメや漫画文化から多大な影響を受けてきた。

 なにせ忙しそうだったので立ち話レベルのインタビューにとどまったが,出展の手応えや日本語対応による反響,独特の世界観のルーツなどを,聞いてみた。
 内向的な人や繊細な感情を抱える人々に寄り添う本作は,なぜこんなにも多くの人の心をつかむのか――その背景には,作り手の“共感”と“笑い”に対する真摯な姿勢があった。

Quail Button アートディレクター Lin Huang氏
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4Gamer:
 こんなにバタバタお忙しそうなのに,お時間ありがとうございます。
 つい先日(注:インタビューは8月16日に行われた)デモ版に日本語対応が入りましたけど,日本のプレイヤーからはどんな感想が届いてますか?

Lin Huang氏:(以下,Huang氏)
 ポジティブなコメントがほとんどです。「ゲームのテーマが好き」とか「キリンの状況がまるで自分のことのようだ」といった声が多く寄せられています。中でも「キリンにすごく共感できる」というコメントが特に多いですね。

4Gamer:
 あぁ日本でも共感を得られているんですね。

Huang氏:
 はい。「ゲームを楽しんでいます」とか「日本語版が出て嬉しい」といった感想もひときわ多かったですね。

4Gamer:
 開発拠点はロサンゼルスですが,ゲームのテーマは,なんというかすごくアジア的に感じました。まぁただのイメージでしかないんですけど,西海岸にもこういう“コミュ障”な人って多いんですか? あんまりそういう感じがしなくて。

Huang氏:
 私たちは3人チームなんですが,実はそのうち2人がアジア出身です。私はアーティスト兼アニメーターで,アジア人でもあります。ただ,キャラクターや背景のデザインは,1940〜60年代の「ミッドセンチュリーモダン」から影響を受けていますね。

※戦後のアメリカを中心に発展したデザイン様式。バウハウス思想の影響を受けており,大胆な色使いとシンプルな形状が特徴。
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4Gamer:
 あぁ……だから作っている人がアジアなのにアメリカっぽいんですね。

Huang氏:
 このスタイルは,シンプルでありながらも強い視覚効果を持っていて,私たちのストーリーテリングや演出のニーズと非常に合っているんです。UPAの作品やモーリス・ノーブル氏にも影響を受けています。

※UPA(United Productions of America)は,1941〜2000年まで活動していたアニメスタジオ。日本のリミテッドアニメーション技法にも影響を与えた。モーリス・ノーブル氏は,「バッグス・バニー」などを手がけた背景デザイナー

4Gamer:
 アーティスティックというよりは,大衆文化的なアプローチが重要なんですね。

Huang氏:
 「パワーパフガールズ」や,新しいミッキーマウスシリーズのようなアプローチも参考にしています。私自身,小さい頃から日本のアニメや漫画が大好きでしたし。

4Gamer:
 日本のコンテンツで参考にしたものはなんですか?

Huang氏:
 特に,藤子・F・不二雄さんの作品や,昔の「クレヨンしんちゃん」を参考にしています。あとは「ぼっち・ざ・ろっく!」や「古見さんは、コミュ症です。」のように,内向的なキャラクターがテーマになっている作品も見ました。そうした作品から学んだ“コミック的”な演出や表現は,私たちのゲームにも自然に馴染んでいると思います。

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4Gamer:
 多岐に渡っていますが,名前を聞くとなるほどとちょっと納得できますね。
 しかしこれ,テーマとして変な風に捉えられてしまう可能性もあって,ゲームのネタにちょっとしづらいと思うんですが,何かその点で苦労したことなどはありますか?

Huang氏:
 うーん……「日常的にあることなのに,それを扱ったゲームが少ないな」と感じたんです。だからこそ私たちは描きたかった。
 なので変にシビアにしないよう,かつ極端な状況を作るために「声をかけられたらキリンの頭が爆発する」という表現にしました(笑)。人間関係のストレスや不安を,感情の動きとして大げさに,でも分かりやすく伝える方法として,爆発を選んだんです。

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4Gamer:
 これだけ注目されたら,いろんなパブリッシャーから声がかかりませんか?

Huang氏:
 そうですね。でも実は注目されていること自体が驚きです。まだアジア圏で見せただけですし。
 あと現時点では,パブリッシャーさんよりもメディアの方とつながりたいです。今後進展があれば,直接ご連絡します。

4Gamer:
 BitSummitの記事も結構読まれましたよ。

Huang氏:
 BitSummit後,確かにウィッシュリストが大きく増えました。長期的にはコンソールでのローンチも目指していますし,日本のプレイヤーにもさらに知ってもらいたいですね。

BitSummitではインターナショナルアワードを受賞した(関連記事
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4Gamer:
 DLCの構想などもあったりしますか?

Huang氏:
 まずは2026年初頭のローンチに向けて,開発を無事完了させる予定です。現在は,デモ版をプレイしてくださった方々のフィードバックを受けて,それをゲームに反映しているところです。
 でも物語のテーマ的に,ストーリーは今後も続けられると思っています。いまの時点では「1週間分のメインストーリー」ですが,その先の物語を見たいという声があれば,DLCという形もあり得ますね。

4Gamer:
 その「1週間分」ですが,現在はどこまで開発が進んでますか。

Huang氏:
 7日間のうち,5日目までがほぼ完成しています。残る6日目と7日目,そしてテストプレイのフィードバックを反映させる調整作業が残っています。

4Gamer:
 なるほど……って,いま8月ですよ。残り「2日分」であと半年かかるということですか?

Huang氏:
 ええ,とてもストレスです(笑)。しかも初頭と言いましたけど,1月はないです。たぶん4月か5月ごろ……?
 デモ版にはざっくりと内容を詰め込んだだけだったので,2日分といっても,レベルやパズル,アニメーションの追加など,まだやることがたくさんあるんです。

BICでもなかなか盛況だったタイトルだし,気になる人はぜひSteamでデモ版をプレイしてみよう
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4Gamer:
 世の中そんなにコミュ強な人ばかりじゃないし,ゲームプレイヤーは内向的な人も多いでしょうから,すごく親近感の湧くテーマだと思います。ぜひ頑張ってください!

Huang氏:
 そう言ってもらえると何よりです。私たちも,アジア市場でもっと展開していきたいです。内向的な人やコミュ障の人は,どこにでもいますしね。

4Gamer:
 最後になりましたが……通訳さんがしゃべる前に反応してましたけど,もしかして日本語聞き取れます?

Huang氏:
 アニメで覚えました(笑)。

―――2025年8月16日収録

4Gamer「BIC2025」記事一覧

「BIC2025」公式サイト

  • 関連タイトル:

    コミュ障キリンの一週間

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