
業界動向
WEMIX流通量操作の容疑で,元Wemade代表チャン・ヒョングク氏に一審は無罪判決
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[インタビュー]来年はWeb3ゲームで何か成功作が出て,日本での認識が変わると思います―――Web3プラットフォームに注力していくWemadeが語る,ブロックチェーンゲームのありよう
![[インタビュー]来年はWeb3ゲームで何か成功作が出て,日本での認識が変わると思います―――Web3プラットフォームに注力していくWemadeが語る,ブロックチェーンゲームのありよう](/games/999/G999905/20231205045/TN/005.jpg)
かつてPCオンラインゲームで名を馳せたWemadeは,Web3を軸とした会社へと,急速にその姿を変えつつある。「片手間で」とか「お試しで」とかいう生易しい感じが微塵もしないその変化について,CEOのチャン氏にいろいろ聞いてみよう。
Wemadeは2020年6月,ブロックチェーンゲーム生態系構築のため,P2E(Play to Earn)関連仮想通貨である「WEMIX」を発行した。WEMIXは,Wemadeの子会社であるWEMIX Pte.が発行した仮想通貨で,ゲーム内の資産を現金化できるシステムの基本通貨として設計された。
同年10月にBithumb※に初めて上場されたWEMIXは,その後UPbit※など他の取引所にも拡大し,急速な成長を遂げた。
※どちらも韓国の暗号通貨取引所
特に2021年にグローバルリリースされた「MIR4」が大ヒットしたことでWEMIXの価格が急上昇し,Wemadeは2021年に約2900億ウォン(約311億円)相当のWEMIXを現金化し,ゲーム会社買収など事業拡大の資金として活用した。
これによりWEMIX市場に相当量の流通量が生じ,それこそが今回の問題のきっかけとなったわけだ。
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2021年にWEMIXの大量現金化が明らかになると,WEMIXの価格とWemadeの株価が同時に下落し始めた。これを受け,チャン・ヒョングク前代表は2022年1月から2月にかけてWEMIXコインの流動化(現金化)を中止すると公式に発表した。
流動化中止の発表は,市場にWEMIXの供給量が制限されるという期待感を醸成し,これを契機に投資家がWEMIXの買いに動いたため,WEMIXの価格とWemadeの株価は上昇傾向を示した。
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問題は,チャン・ヒョングク前代表の公式発表とは異なり,実際にはWEMIXの流動化が継続されていた点だ。
検察の捜査によると,チャン・ヒョングク前代表は流動化停止宣言後の2022年2月から10月にかけて,約3000億ウォン相当のWEMIXコインをファンド投資や担保融資などを通じて現金化した。これはWEMIXを担保として預け,USDT(Tether)などのステーブルコインを受け取って活用する方式で行われた。
検察は,これらは虚偽の開示を通じて投資者を欺き,Wemadeの株価とWEMIXの相場を操作する相場操作に該当すると判断した。
特に,当時のWEMIXの流通量が取引所に提出した計画流通量を超過しており,これは2022年12月にデジタル資産取引所共同協議会(DAXA)から1次上場廃止決定を受ける結果につながった。
さらに2023年5月,民主党のキム・ナムグク議員が2022年1〜2月にWEMIXコイン約80万個(当時の時価約60億ウォン)を保有し,その全量を処分した事実がメディアを通じて明らかになり,WEMIX関連の疑惑が政治的課題として浮上した。キム議員は全南大学法科大学院出身で,第1回弁護士試験に合格した法曹出身の国会議員だった。
キム議員のWEMIX保有疑惑は,単なる投資問題を超え,複数の争点を生み出した。特に,キム議員が2021年7月に仮想資産課税猶予法案を共同提出し,2021年12月にゲーム産業法改正案を提出した事実が明らかになり,利益相反の議論が激化した。
また,キム議員が2022年2月にNFTベースの「イ・ジェミョン・ファンド」の企画を担当した際,その発表前後でWEMIXの価格が上昇した状況も発見された。
金融情報分析院はキム議員のWEMIX取引を疑わしいものと判断し,検察に通報。ソウル南部地検が捜査を開始した。検察はキム議員の資金の出所と未公開情報の利用有無を重点的に調査し,その過程でWEMIX発行元のWemadeに対する捜査も拡大された。2023年には「国民の力」の議員がWemade本社を訪問し,当該問題の調査を行った。
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結局,検察はチャン・ヒョングク前代表とWemadeが虚偽の公表を通じて投資家を欺き,Wemadeの株価とWEMIXの相場を操作するなど不正な利益を得たとして,これが「資本市場と金融投資業に関する法律」違反に該当すると判断,2024年8月,チャン・ヒョングク前代表とWemade法人を資本市場法違反の容疑で起訴した。
また,チャン・ヒョングク前代表には懲役5年と罰金2億ウォン,Wemadeには罰金5億ウォンを求刑した。
これに対し,チャン・ヒョングク前代表と弁護団は当初からすべての容疑を否認し,強く反論した。
まず,仮想通貨が資本市場法上の金融投資商品に該当しない点を無罪の核心的な根拠として提示した。
さらに2022年当時,コインに関する開示や公告に関する法的義務は一切存在せず,現在施行中の「仮想通貨利用者保護法」は2024年7月に施行されたため,遡及適用できないと主張した。
ほかにも,流動化中止の発表は取引所での売却をしないという意味であり,外部投資や資産運用会社を通じた取引まで禁止する意図ではなかったと主張した。実際,HYPERITHMやエコファンドなど外部投資運用会社を通じた流動化は,通常の資金調達戦略だったと強調した。
双方の激しい攻防が続いた結果,7月15日,ソウル南部地裁刑事13部のキム・サンヨン部長判事は,チャン・ヒョングク前代表とWemade法人に対する一審判決で無罪を宣告した。
裁判部は,資本市場法の規制対象は金融投資商品であるWemade株式であり,仮想資産であるWEMIXは該当しないと区別した。また,チャン・ヒョングク前代表の発言内容と文脈を考慮すると,WEMIX利用者に対するものであって,Wemade株式投資者に対するものとはみなせないとの判断を示した。
特に裁判部は,WEMIXの価格とWemadeの株価の連動性に関する検察の主張を認めなかった。
Wemadeは2022年時点で売上高の80%以上がゲームから発生しており,株価の上昇は,リリースされたゲームの成果と全体的な金融市場の流動性増加の影響を受けたものと見た。相関関係があるとしても,ゲーム業界の状況や流動性など共通の要因によるもので,因果関係とは見なせないとした。
また裁判部は当時,仮想資産に関する明確な規制が存在しなかった点を強調した。2024年7月から仮想資産利用者保護法が施行されているが,この事件当時,規制の空白地帯にあり,関連条項がなかったことを指摘した。
これにより,Wemadeは法的リスクの最初の難関を乗り越え,チャン・ヒョングク前代表も刑事処罰を免れることになった。
参考までに,先に述べたキム議員は2021年と2022年の財産申告プロセスで仮想通貨を故意に漏らした容疑で起訴され,検察は懲役6か月を求刑したが,2月に開かれた一審判決で裁判所は無罪を宣告した。
そして,WEMIXおよびWEMIX生態系を基盤としたWemadeのブロックチェーンゲーム事業は一息つけることになり,WEMIXを巡る市場内の信頼回復努力も一層加速すると見込まれる。さらに,チャン・ヒョングク代表が新設・運営中のNEXUSの事業も一層加速する見込みだ。
一審裁判を終えて出てきたチャン・ヒョングク代表は,WEMIXの投資家とWemadeの株主,業界関係者の心労が深かっただろうと述べ,総合的な謝罪の言葉を述べた。また,適法な判決を契機にこれまで滞っていたパートナーとの業務を,積極的に進める立場を明らかにした。
検察は判決文の内容を分析した上で控訴の可否を検討する方針だと明らかにした。しかし,一審裁判所の明確な法理解釈により,控訴審でも同様の結果が出る可能性が高いとされている。
結局,この事件は急変する仮想資産市場において,既存の金融法体系の限界と新たな規制体系の必要性を示した代表的な事例として記録される見込みだ。(著者:パク・サンボム,ザン・ヨングォン)
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