
イベント
生成AIを活用したアニメコンテスト「Prince JAM! 2025」の審査結果発表イベントをレポート。広井王子氏やガンホーの横山秀幸氏らが審査員に
会場となった全電通ホール(東京都千代田区)では,同コンテストのファイナリスト10作品が上映され,審査員および特別審査員の選出による各賞の発表・表彰が行われた。
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本コンテストは,AI技術がコンテンツ制作の分野に台頭し,新たなアプローチの作品が増えたこと。またアニメ特化型Web3プラットフォームなど最新技術の登場により,資金調達においても新しい流れが生まれている状況を踏まえて企画された。
開催は2回めで,1回めの最優秀賞作品「悪夢の淵から」は,長編アニメ化が進められている。
「AI×Web3アニメコンテスト Prince JAM!」公式サイト
審査対象となる応募作品は,「制作過程でAI技術を使用した作品」で,映像尺が90秒から2分以内のアニメーション全般。ファイナリストに選出された10作品と作者は以下のとおり。
作品名「Augmentation Running」/KEETY
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作品名「GRANDMALEVIT」/山口ヒロキ
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作品名「NEO:ON」/柳 明菜
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作品名「ハイエナ目」/平田茉莉花
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作品名「花が咲く星で」/YUUUKI
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作品名「Firewall」/Rockzheart
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作品名「Re:Man」/藤田大和
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作品名「蝉時雨リワインド」/HiBi
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作品名「夢うつつとは今宵さだめよ」/銀ペガ໒꒱
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作品名「ECHO GEAR: UNIT Ø 第零課の残響装」/Takka
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各作品の講評や審査を行ったのは,広井王子氏やガンホー・オンラインエンターテイメントの横山秀幸氏ら5人の審査員と,8人の特別審査員だ。
●審査員:
広井王子:クリエイター/舞台演出家
数土直志:ジャーナリスト/新潟国際アニメーション映画祭プログラムディレクター
宮河恭夫:アニメーションプロデューサー/元バンダイナムコエンターテインメント 代表取締役社長
浅尾芳宣:ガイナ 代表取締役社長/福島ガイナ 代表取締役社長
横山秀幸:ガンホー・オンラインエンターテイメント 執行役員
※敬称略
![]() 広井王子氏 |
●特別審査員:
山内 学:アミューズクリエイティブスタジオ 取締役
倉光一輝:ISARIBI 取締役
田中宏幸:イーリングプロダクション 代表取締役
北村勝利:海馬 代表取締役/#SOZO美術館館長
sola:情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
杉山楠知:DANCING BONITO 代表取締役/CEO
異儀田 諭:MIXI 開発本部たんぽぽ室DX推進グループ マネージャー
脇 康平:リヴァイ 代表取締役社長/CEO
※敬称略
各作品上映後の講評では,審査員から作者に向けて,「企業や投資家に出資したいと思ってもらうことを意識すべき」といったビジネス面でのアドバイスや,「AIは何でも作れてしまうので,いろんなものを詰め込んでしまいがち」といったショートアニメ制作面でのアドバイスがなされた。
審査員および特別審査員が,会場にて選出した受賞作品は以下のとおり。
最優秀賞
「花が咲く星で」/YUUUKI
本作の舞台は,植物の60%が絶滅するも,なぜか赤い花だけが生き残り続ける世界。赤い花の謎を解き明かせば,また緑が戻るのではという予測のもと研究が進められるが,何者かの介入により試験炉が暴走し,未完成の赤い花DNA試薬が大気中へ拡散してしまう。
研究員たちが次々と花へと変異していく中,主人公の紅葉も半変異状態に。ただ非常用サーバーから再生された天才先輩研究者・蒼真のホログラムは「君の体内に暴走を鎮める鍵がある」と告げる。そして感染は世界規模で拡大し,紅葉は孤独な戦いへ身を投じることになる。
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作者のYUUUKIさんによると,先人たちがヒガンバナや赤いバラなど赤い花にさまざまな意味を込めていたことに着目し,そこから人が生きていくうえでのヒントを得られるのではないかと考え,本作を制作したとのこと。
2020年頃には,紙と鉛筆でアニメーション制作に取り組んでおり,ひとりでやることの難しさやアニメの複雑さなどを実感したという。AIを使ったアニメの制作は,当時の経験がいきたそうで,頭の中で考えていたことを実現できたと話していた。
![]() プレゼンターを務めたPuri Prince 代表取締役 中山雅弘氏(左)と,YUUUKIさん(右) |
優秀賞
「NEO:ON」/柳 明菜
本作の舞台は,人間の心や意識をリンクさせた仮想世界「NEO:ON」だ。バグを監視する少年・アオと,別の惑星からアクセスしてきた少女・ウミが,壊れゆく世界で「人間の本当の力」と向き合っていくボーイ・ミーツ・ガールのストーリーを描いている。
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作者の柳 明菜さんは,実写のドラマや映画,広告映像の監督を務めた経験があるが,アニメ制作は憧れを抱いていつつも,自分には無理だと思っていたとのこと。しかし知人の薦めもあって,2か月ほど前から本コンテストに向けてアニメ制作に取り組み始めたそうだ。
今回の受賞にあたっては,「私でもアニメが作れる。そうしたAIの可能性を多くの人に伝えていきたいし,また作品を作ってみたい」と話していた。
![]() プレゼンターを務めたコスプレイヤー/グラビアアイドルの火将ロシエルさん(左)と,柳 明菜さん(右) |
「Firewall」/Rockzheart
本作の舞台は,神AIが支配する2079年のメガシティ。しかし資源が尽きたとき,神AIは中立かつ冷徹な計算により,大量の犠牲を選択する。そこで神AIの玉座を揺るがすべく,主人公たちが立ち上がるという,「感情泣き秩序vs.不完全ゆえの人間の揺らぎ」をテーマにした作品である。
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![]() Rockzheartさんは,残念ながら当日会場に足を運べなかった |
特別賞
アミューズ賞:「NEO:ON」/柳 明菜
ISARIBI賞:「Re:Man」/藤田大和
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![]() 藤田大和さん |
イーリング賞:「Firewall」/Rockzheart
#SOZO賞:「ハイエナ目」/平田茉莉花
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![]() 平田茉莉花さん |
DB賞:「夢うつつとは今宵さだめよ」/銀ペガ໒꒱
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![]() 銀ペガ໒꒱さん |
MIXI賞:「蝉時雨リワインド」/HiBi
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![]() HiBiさん |
sola賞:「Firewall」/Rockzheart
リヴァイ賞:「花が咲く星で」/YUUUKI
イベントのクロージングでは,メイン審査員を代表して広井王子氏が登壇し,受賞者にあらためて賛辞の言葉を投げかけた。
AIが出てきたことで,より人間性を問われるようになったとし,「AIはツールですから,人間の持っている知能をフル活用するためにサポートするものです。僕はそういう未来を信じています」と語った。
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さらに日本初の本格的な連続TVアニメ「鉄腕アトム」の制作を例に挙げ,当時多くのアニメーターが疲弊していった大変な作業を,これからはAIが担ってくれると指摘。「大事なのは,ものを作るクリエイターの想像力。想像力を持っているのは人間だけで,AIには想像ができない。AIはツールとして進歩していきますから,それを使って素晴らしい作品がどんどん出てくることに期待しています」と展望を語った。
「Prince JAM!」に関しては,2回めを開催したことにより「ビジネスの場」であることが明確になったとコメントした。そのため次回以降は,クリエイターが「どうすれば出資してもらえるか」を意識して作品を作るといいのではないかとも話していた。
最後に広井氏は,再びクリエイターの人間性の重要性に言及。「子どもたちも見ること」や「未来に対してどんな思いで作るのか」などを常に考えて,AIを活用した作品制作をしてほしいとまとめていた。
![]() 会場では,惜しくもファイナリストに選出されなかった秀作に関するトークセッションも行われた |
「AI×Web3アニメコンテスト Prince JAM!」公式サイト
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