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札幌のベテランたちがエンジンを作り,当時のハイスコアラーが検証を行う「アーケードアーカイブス」開発シーン[CEDEC 2025]
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印刷2025/07/23 21:21

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札幌のベテランたちがエンジンを作り,当時のハイスコアラーが検証を行う「アーケードアーカイブス」開発シーン[CEDEC 2025]

 開発者向けカンファレンス「CEDEC 2025」で2025年7月22日に,講演「アーケードアーカイバー/ゲーム開発者の証言と開発資料を配信動画として遺す意義」が行われた。
 この講演では,レトロゲーム(クラシックゲーム/オールドゲーム)を現行機に移植する「アーケードアーカイブス」シリーズの開発シーンが初めて明かされ,番組「アーケードアーカイバー」の取り組みが語られた。ここではダイジェストでお届けしよう。

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●「アーケードアーカイバー/ゲーム開発者の証言と開発資料を配信動画として遺す意義」登壇者

外山雄一氏(タイトー)
濱田 倫氏(ハムスター)
宇出津 和仁氏(バンダイナムコエンターテインメント)

写真左から,宇出津 和仁氏(バンダイナムコエンターテインメント),濱田 倫氏(ハムスター),外山雄一氏(タイトー)
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 ゲームセンターで稼働したアーケードゲームを,現行機に移植する「アーケードアーカイブス」は,すでに11年を数え,番組「アーケードアーカイバー」も開発者の出演が増えて,資料的な価値が増している。

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 アーケードアーカイブスを制作するには,ゲーム基板からデータを吸い出すことが必要となる。そのための基板は,アーケードゲーム業界と長い関わりを持つ高井商会が所有するものが使われることがほとんどだという。
 アーケードアーカイブスのエンジンを開発するのは札幌の開発室で,ベテランのエンジニアたちが移植を行う。札幌という地名でピンときた人も多いと思うが,エンジニアたちの多くは元ハドソン中央研究所の所属であり,しっかりとしたハードウェアの知識を持っている。
 濱田氏いわく「アセンブラを書ける人たちだけが集まっている」そうで,その実力は折り紙付きといえるだろう(ナムコの「SYSTEM22」だけはバンダイナムコ研究所のスタッフとの合同作業が行われているとのこと)。

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 東京では,UIの制作やデバッグ作業が行われる。アーケードアーカイブスにおけるデバッグはバグの発見に留まらず,プレイ感を当時のまま再現できているかの検証も含まれる。
 そのためには基板とアーケードアーカイブスを比較し,当時の開発者自身やスコアラーにチェックをしてもらう。「リッジレーサー」では全国1位の記録を持つハイスコアラーを招聘し,当時のテクニックが使えるかどうかといった細かな部分まで検証が行われている。こうした検証は,配信するすべてのタイトルで必ず行われるそうだ。

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 そのアーケードアーカイブスに関する情報を発信するのが,アーケードアーカイバーであり,こちらは2015年に配信が始まった。
 当初は移植タイトルの紹介がメインだったが,2021年9月の第324回「アーケードアーカイバー ナムコスペシャル!」で宇出津氏が登場してからは,当時の開発者を積極的に招き,開発秘話や資料を公開してもらう方向に変わっている。
 視聴回数が3700前後だったものが1万を超え,高評価率が98%の回もあったというから効果は歴然だ。

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 第540回「アーケードアーカイバー リッジレーサースペシャル!」では,プロジェクトリーダーの田城幸一氏を始めとした,9人のゲストを招いているが,同作のスタッフがこれだけ集まるのも珍しいことだったという。
 そのおかげか,「リッジレーサー」におけるドリフトが,北海道のタクシーやスロットカーからヒントを得たという開発秘話も引き出している。
 また第541回「アーケードアーカイバー スパイナルブレーカーズスペシャル!」では,「スパイナルブレイカーズ」の主人公が「ワッフル大佐」であり,回復アイテムとしてワッフルが登場する理由が,“ビデオシステムの近所にフジファミリーショップがあり,スタッフがそこのワッフルを食べていたから”であることも明らかになっている。
 当時の開発者に集まってもらうことで,より多くのエピソードを発掘できるという効果についてはWebマガジン「Beep21」の編集長である西村 亨氏も指摘(関連記事)しており,今後のゲーム史編纂における一つのキーワードとなりそうだ。

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 ゲームを移植し,番組を配信することはゲームメーカー側にもメリットがあると宇出津氏は語る。
 CEDEC 2018では貴重な開発資料が廃棄の危機に瀕していたという事情が明かされた(関連記事)が,現在は整理も進められており,ソフト関係は段ボール350箱,ハード関連も数百箱分の資料が保存されている。
 アーケードアーカイブスへの移植では,資料の再整理やスキャンを行うため,整備を進めるいい機会と認識しているという。
 こうした資料が「『ドルアーガの塔』40周年記念 公式記録全集」や「PAC‐MAN×スカイガーデン パックマンのゲーム博物館」のように事業に活かせた例もある。
 このように,資料を収益につなげることで保存活動に会社の理解を得る大切さについては,CEDEC 2024の「ゲーム開発過去資料の保存の最前線を語ろう!」でも取り上げられている(関連記事)。個人的には,こうした実例が積み重なることで,保存活動がよりスムーズになることを望みたい。

 本講演では,開発者とコンタクトを取る大変さや,その際に使われるメールの文面,配信をきっかけに,開発者が自作の価値を再認識したエピソードなど,興味深いテーマが語られている。日を改めて詳報をお届けするので,興味のある人は楽しみにしていてほしい。

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この日は,2025年7月31日に「THE 運動会」が配信されることも明かされた
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「CEDEC 2025」公式サイト

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