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石破総理,武藤経産相,加藤財務相がWeb3カンファレンス「WebX 2025」で登壇。Web3を国家戦略として推進する姿勢を表明[WebX]
開会式では,内閣総理大臣の石破 茂氏,経済産業大臣の武藤容治氏,財務大臣の加藤勝信氏が相次いで登壇。スタートアップ支援や地方創生,税制改正など,それぞれの立場からWeb3を国家戦略として後押しする方針を語った。
![]() 記念撮影で笑顔を見せる石破氏(左)と武藤氏(右) |
石破総理「2020年代は歴史の大きな転換点」
最初に挨拶した石破氏は,Web3に関わる世界のキープレイヤーが一堂に会する本カンファレンスの意義を強調した。
同氏は,日本のスタートアップの成長に言及し,2021年の1万6000社から,4年間で9000社増え,今年は2万5000社になったと説明する。
地政学的に不透明さが増すなか,新たな経済成長にはスタートアップが極めて重要であり,政府としても「スタートアップ育成5か年計画」を強化し,Web3を含むデジタル関連産業への支援を進めていくという。
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石破氏は,自身の内閣が進める地方創生において,Web3が大きく貢献する可能性にも期待を寄せる。具体的な事例として,島根県隠岐諸島の海士町(あまちょう)を挙げ,Web3を活用して地域外から課題解決のアイデアを募り,返礼として地域コインを提供する試みを紹介した。
また同氏は,「おそらく世界は今,100年に一度の転換期なのだと思います」と述べ,未来の歴史書では2020年代が産業革命のように大きな転換点として記されるだろうとの見方を示した。人口減少という大きな課題に直面する日本において,スタートアップがどのような未来を描くかが重要だとし,会場に集まった人々の活躍に期待を寄せ,挨拶を締めくくった。
武藤経産相「隗より始めよの精神で,新技術を活用」
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米国で米ドルと価格が連動するステーブルコインに関する法案が下院で可決された例を挙げ,「まさに国家としての強い意思を感じます」と述べ,日本もこの潮流に乗り遅れてはならないと危機感を示した。
日本においては,これまで金融領域が中心だったブロックチェーン技術が,近年では日本が強みを持つゲーム,アニメ,漫画,アート,スポーツといった分野や,地方創生にも活用が広がっていると説明。
武藤氏の出身地である岐阜県では,高山市がふるさと納税の返礼品として,ウイスキー樽のオーナー権をNFT(非代替性トークン)として提供しているという。そして,同氏は「Web3は,地域の中小企業やクリエイターが持つ高い価値を,全国やグローバルの市場とつなぎ,発展させていくために非常に効果的なツール」だと見解を示した。
経済産業省は,Web3関連事業を円滑化するための税制改正や,スタートアップへの資金提供を可能にする法改正など,ポテンシャルを引き出すための環境整備に努めてきたと,武藤氏は報告する。
また,企業・業種横断のデータ連携基盤である「ウラノス・エコシステム」にブロックチェーン技術を用いるなど,「隗より始めよ」の精神で政府も積極的に新技術を活用していくとのこと。
加藤財務相,基調講演で利用者保護とイノベーション促進のバランスを語る
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同氏は,マウントゴックスの破産などをきっかけに,日本が世界に先駆けて2016年に資金決済法を改正し,暗号資産交換業者に登録制を導入したと,経緯を振り返る。制度を整備した結果,現在の国内の暗号資産口座数は1200万を超え,利用者の裾野は着実に拡大しているという。
今後の主要なテーマとして,同氏は「国際競争力の強化」と「成熟期を見据えた対応」の2点を挙げた。
とくに後者については,利用者が一般層に広がるなかで,利用者保護,サイバーセキュリティ対策,マネーロンダリング対策の重要性が増していると指摘。「利用者の安心・安全なくして,その利用の裾野が広がるわけではありません」と述べ,これらの対策はコストであると同時に,市場全体の成長に向けた投資であるという前向きな姿勢を業界に求めた。
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また,暗号資産への課税についても言及された。現状,暗号資産取引で得た所得は最大55%の税率が課される総合課税の対象だが,令和7年度与党税制改正大綱において,ほかの金融商品と同等の投資家保護などを前提に,分離課税への見直しを検討しているそうだ。
加藤氏は「金融庁としては,その前提となる必要な法整備を検討していきたい」と述べ,税制改正に向けた環境整備を進める意向を示した。
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