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稼げるWeb3ゲームではなく,面白いWeb3ゲームを。「エンタメ革命:ブロックチェーンが生み出す新たな価値創造」セッションレポート[WebX]
モデレータはCoinPostの古田鴻之介氏が務め,コナミデジタルエンタテインメント制作部 部長の金友 健氏によるトークが繰り広げられたので,そのレポートをお送りしよう。
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冒頭では,金友氏がKONAMIで取り組んでいるブロックチェーンゲームについて語った。ただ,プレイをして稼げるというもの,いわゆる「GameFi」のようなものではなく,あくまで「今いるゲームプレイヤーに,ブロックチェーン技術による新しい体験をしてもらいたい」というのが目的であるそうだ。
氏は,ブロックチェーンっぽい要素,いわゆるウォレットや暗号資産などの概念をプレイヤーから見えなくしていくシステム設計が重要だと主張する。現在は,ゲームを作ることと,Web2ライクなWeb3のインフラ設計に取り組んでいるとのこと。
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金友氏は,ゲームを始めるスタート地点はブロックチェーンゲームだと思って始めるのではなく,「面白そうなゲームだな」と思って始める……という普通のゲームと同様のものであってほしいと語る。ただし,普通のゲームと異なるのは,課金アイテムをゲーム内のマーケットプレイスで売買できるという点だ。
ブロックチェーンを使わないでそれをやろうとした場合は,プレイヤーがデータを書き換えたり,あるいはお金を送ったのにアイテムが送られてこなかったりするなどのトラブルになることがあるため,CESA(※)でそうしたリアルマネートレード(RMT)は禁止されている。
しかし,ブロックチェーンを使えば不正やプレイヤー間のトラブルを防げ,CESAのRMTガイドラインの対象外になるとのこと。
※一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会の略称。日本の家庭用ゲーム産業の発展や振興を目的とした業界団体
ただし,暗号資産の売買はゲームプレイヤーにとってまったく一般的ではないので,“日本円や海外の通貨”で購入したり,NFTを売却した代金を受け取ったりできるようなサービスを提供したいという。
それには,ステーブルコインなどいろいろな手段が考えられるが,できるだけ普段使っている通貨やサービスに紐づいたものを目指したいと金友氏は述べた。
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モデレーターの古田氏から「ブロックチェーンを使っていると認識せずにアイテムの売買を行える世界は,近い将来に実現するのか?」という質問が投げかけられると,金友氏は「技術的にはすぐにできると思う。技術よりも法規制が大きなハードルになる」と語った。
ただし,法規制の話でいえば,日本は比較的やりやすいほうであるとのこと。氏は金融よりもブロックチェーンをどうエンタメに昇華するかにフォーカスしていることに加えて,金融庁のサポートデスクに確認したときもかなりスムーズな回答をもらえるため,何が白で何が黒かは分かりやすい環境であるそうだ。
氏は,ゲーム以外のエンタメにおいても,Web3と結びつく可能性は大いにあると語る。Web3の世界では,コンテンツのユーザーの行動データを外部から可視化できるため,それから口コミなどにも発生しやすく,“推し”などによって人々がよりつながりやすくなるのではないか,と述べた。
ただし,そうした未来がすぐに来るわけではないので,「最初の成功事例をゲームから出したい」と金友氏は話した。
Web3を使ったゲームについては,金友氏は「いわゆる稼ぐ系でのゲームの成功は難しいと思う」と持論を展開する。
一方で,Web3技術を用いたゲームタイトル自体の開発自体は大きな取り組みとしてあり,それは海外を含めて現在仕込みの時期に入っているとのこと。年内というようなスピード感では発表できないが,1年後,2年後にはWeb3技術を仕組みとして用いつつも,そこをメインとしない大作が発表されると氏は予測する。
本セッションのトークからは,Web3で稼ぐというよりは純粋に「面白いコンテンツ」を作ろうという意思を感じられ,筆者もゲームプレイヤーとして好感が持てる内容であった。これからどのような形で世に現れてくるのか。今後の流れに期待したい。
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