イベント
中国の未成年者ゲーム利用実態が明らかに。政策は一定の成果も,家庭管理の甘さが抜け道に
![]() |
本調査は約3か月にわたって行われ,北京や上海といった一線都市から地方遠隔地域までを含む幅広いエリアを対象としている。年齢層や家庭の収入水準ごとに,未成年者のインターネット利用状況と,それに対する保護者の意識が詳細に分析された。
![]() |
調査データによると,2025年6月末時点で,中国における19歳以下のインターネットユーザー数は2億900万人に達し,全体の18.6%を占めている。このうち10歳以下のユーザーは5500万人と,過去最高水準を更新した。
![]() |
年齢との相関分析では,未成年者は年齢が1歳上がるごとに,オンラインゲームに費やす時間と課金額が,それぞれ平均7.7%,8.7%増加する傾向が見られた。ただし,インターネット娯楽全体に占めるゲームの利用時間は19.7%にとどまり,多くの時間が動画視聴やSNSの利用などに割かれているという。唐氏は,こうした状況そのものが,将来的な社会リスクを内包していると指摘した。
中国政府は2020年以降,未成年者のオンラインゲーム利用を制限する政策を段階的に強化してきた。今回の調査結果からは,こうした施策が一定の効果を上げていることも示されている。回答者のうち,71%の未成年者は週あたりのゲーム利用時間が3時間以内に抑えられており,90.4%は課金額が規定範囲内に収まっていた。
![]() |
一方で,規制が完全ではない現実も明らかになった。調査によれば,多くの未成年者が保護者のアカウントを利用することで,プレイ時間や課金制限を回避しているという。さらに,一部では,死者の身分情報を不正に流通させ,年齢確認を突破させるグレー業者の存在も確認された。
家庭における管理方針を見ると,11.81%の保護者が「全面禁止」という強硬な対応を取っており,学業成績の低下などの問題を,ゲームの利用に帰責する傾向が見られた。その一方で,63.24%の保護者は「依存しなければ問題ない」とする比較的曖昧な容認姿勢を示している。
![]() |
また,59.83%の保護者は,ゲームの影響を一定程度肯定的に捉えており,中にはゲームを褒美として子どもに与える家庭も存在する。これに対し唐氏は,心理学の観点から,こうした運用は「強化理論」により,かえって子どものゲーム志向を強める可能性があるとして警鐘を鳴らした。一方で,約20.43%の保護者が「子どもと一緒にプレイする」ことを選択しており,西欧的な家庭教育に近いこの「同伴型」の関わり方は,比較的健全な誘導手段と評価されている。
技術的な規制の効果は,家庭側の理解度やITリテラシーによって大きく左右される傾向にある。とくに地方都市や農村部では,保護者がインターネット関連ツールを十分に使いこなせないことが,管理の限界につながっているという。一部のゲーム企業がAI技術を用いて未成年者のプレイを識別する取り組みも紹介されており,これに対して26.63%の保護者がプライバシーへの懸念を示した一方で,54.88%は「必要かつ有効な補助手段」と肯定的に受け止めている。
報告の最後に唐氏は,未成年者のゲーム依存対策を実効性あるものとするためには,ゲーム企業による技術的対応だけでなく,家庭側の関与が不可欠であると強調した。家庭と社会が連携しなければ,規制をかいくぐる抜け道を完全に塞ぐことはできないと,あらためて呼びかけ,報告を締めくくった。
- 関連タイトル:
講演/シンポジウム - この記事のURL:
























