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いきなりアジア最大規模のゲームショウに飛躍したBilibili Worldは,胡坐をかくときが来たのだろうか
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先週末に終了したBilibili World(以下BW)は,3日間の来場者数が最終的にのべ40万人に達した。この数字は開幕前の予想を約10万人上回り,名実ともに「アジア最大のACGN※総合展」となった。
中国において,アニメ(Animation),漫画(Comic),ゲーム(Game),小説(Novel)の頭文字を取った略称で,サブカルチャー全般を示す
そもそもはアニメの展示会なのだが,今回の展示配置や注目されたコンテンツから見ると,BWは実質的に完全な「ゲーム展示会」になっている。
また,ついに国家会展中心の全展示ホールを使用し,会場面積は24万平方メートルに達した。同じく上海で開催されるChinaJoyや,日本の東京ゲームショウでも,この規模を超えるのは困難だろう。
統計によると,BWには世界から167の出展社および,3万名以上のCoserが参加している。会場には約800台の“痛車”が集まり,のべ20の国または地域から,40万人が参加したイベントとなった(2024年と比べて15万人増加している)。パスポートを利用したチケット購入は13%で,同イベントの歴年最高比率を記録した。
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来場者は,同じ趣味を持つ人々がこれほど多く集まったことに興奮し,出展者は多くの人に見てもらえることに喜び,海外メディアやゲストは,中国の二次元エンターテインメント市場の躍動する活力を目の当たりにした。
昨年のBWも24万人を超える来場者があったのだが,会場は今年より小さかった。なので筆者は,既に会場内のこのような人の流れの密度には慣れている。
今年はむしろ,会場外部の方が印象深かった。展示会期間中,ほぼいつも会場周辺で大勢の観客が,車両と並行して車道を歩いている姿を見かけた。
これは彼らが故意にルールを破って近道をしているわけではなく,会場が複数の出入り口を臨時封鎖し,その案内が不十分だったため,タクシーを呼べず,引き返す道もない来場者たちが,大雨の中水たまりを踏みながら別の出口を探すしかなかったからだった。
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この件は今年のBWの縮図のようなもので,開催されてからまだ日が浅い展示会ながらも,様々な環境要因に相乗して急速に膨張している。そしてイベントの内外が,限界以上に肥大化しつつあるようだ。
中国オタクの最前線「BiliBili World 2025」は,チケット30万枚が35秒で完売。ゲーム関連の出展が増え,目が離せないイベントに

イベント「BiliBili World 2025」が中国・上海で,2025年7月11日から7月13日まで開催されている。今年は規模が拡大し,30万枚のチケットが用意されたものの,わずか35秒で完売。会場の展示スペースは拡大し,ゲーム関連の出展もかなり増えた印象だ。イベント全体の様子をお届けしよう。
「感情的価値」を与えるインタラクティブ体験が増えてきている
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その一方で,「原神」「ゼンレスゾーンゼロ」「鳴潮」「Mecha Break」「Delta Force」「ドールズフロントライン2:エクシリウム」「インフィニティニキ」などの中国製ゲームは,昨年のgamescomや東京ゲームショウなどの国際的なゲームショウにおいても,目を引くタイトルになっているといえよう。
現在の中国ゲームプレイヤーは,自国でも最新コンテンツを体験できるようになったのだ。
[プレイレポ]アニメ調グラフィックスでガチアクション。「Rewinding Cadence」は戦闘がアツい
![[プレイレポ]アニメ調グラフィックスでガチアクション。「Rewinding Cadence」は戦闘がアツい](/games/920/G092029/20250712003/TN/017.jpg)
中国・上海で開催中の「BiliBili World 2025」に,Saroasis Studioの新作「Rewinding Cadence」がプレイアブル出展されていた。アニメ調グラフィックスの可愛い作品だと思っていたら,ガチなアクションの戦闘で驚いた。
[プレイレポ]「アズールプロミリア」はキャラが可愛いだけじゃなく,コンテンツ山盛りの予感
![[プレイレポ]「アズールプロミリア」はキャラが可愛いだけじゃなく,コンテンツ山盛りの予感](/games/784/G078487/20250712004/TN/011.jpg)
中国・上海で2025年7月11日から7月13日まで開催中の「BiliBili World 2025」で,Manjuu Gamesの新作「アズールプロミリア」が初のプレイブル出展されている。キャラクターが抜群に可愛いだけでなく,一緒に戦ってくれるキボや採集など,コンテンツの多い欲張りなゲームになるようだ。
中国製ゲームの成長は逆に,中国国内のゲームショウと,海外のゲームショウの出展タイトルで,相当な重複が見られることにもつながっている。しかも,それも海外ゲームショウを超えようとする勢いが見えている。
「ブラウンダスト2」のプロデューサーは,BWでは一般観客がコスプレ文化に対して,より高い受容度と参加度を示していると,語っていた。
海外のゲームショウにはロールプレイパフォーマンスをしているコスプレイヤーが多いことに大して,中国のアニメ展では一般観客のコスプレ度が高く,コスプレしつつも,多くが普通の観客として会場を回っているということだ。
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そのため,欧米のアニメゲームプレイヤーにとっては,BW会場内でみんなが平等に遊んでいるという一体化した雰囲気があり,それはすなわち「二次元の聖地」に近いということなのかもしれない。
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「恋と深空」「きらめきパラダイス」などの女性向けタイトルは,「極めて高い感情的価値」を与えるインタラクティブ体験を提供していた。出展内容が,物理的なプレゼントから脱却した精神的なサービスへと昇華しているのは,まだほかのゲームショウにはあまり見られない特徴だ。
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それら2点だけでも,現在のBWが多くの海外来場者を引き付ける十分な能力を持っているといえる。会場内で海外からの来場者はそれほど多くは見えないが,前述のようにパスポート入場(中国人以外)の比率が13%あるという公式発表があったほどだ。
そして「DEATH STRANDING 2」「ボーダーランズ4」「紅の砂漠」「PUBG: BATTLEGROUNDS」「ブラウンダスト2」など,海外の人気タイトルがBWで個別ブースを持ち,そのブース設計も海外ゲームショウの出展に劣らないものだ。
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セガは,昨年「メタファー:リファンタジオ」で試験的に出展した後,今年はより大きくて緻密で,より多くのIPを含む展示を構築した。
関連プロデューサーがメインステージのイベントに参加し,会場には内海州史社長の姿も見られた。セガは今年,TGS前夜にパーティを開催する伝統を模倣し,BW前夜にもゲーム業界者と一部のプレイヤーを招待したサロンを開催した。
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ソニーはさらに大規模で,ゲーム,デジタルカメラ,アニメ,映画などの複数の事業部門がそれぞれ展示を設立し,複数の展示館に散在させ,「次元漫游(SONY EXPO)」のテーマで連携した。
BWというイベントの中で,ほぼ自社のプチ展示会を開催したようなものだ。今年のBWで最も注目されたゲストである小島秀夫氏がBWに参加することも,明らかにPlayStation中国の協力があったからだ。
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コーエーテクモゲームスは個別ブースを設けていないものの,昨年と同様に,プロデューサーがメディア取材やプレイヤーとの交流の場を設けた。
我々が受け取った最も詳細な入場ガイドは,コーエーテクモ側のスタッフから提供されたもので,初日のカオスの中,便利に取材場所を見つけられるよう支援してくれた。
「紅白レスレリ」がBiliBili Worldで初のプレイアブル出展。「レスレリ」の要素を引き継ぎつつ,コンシューマ向けにパワーアップ

コーエーテクモゲームスは,2025年9月26日に発売を予定している「紅の錬金術士と白の守護者 〜レスレリアーナのアトリエ〜」を,中国・上海で開催された「BiliBili World 2025」にてプレイアブル出展した。内容を紹介しつつ,「アトリエ」シリーズの総合プロデューサー・細井順三氏のコメントもお届けする。
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- PC:紅の錬金術士と白の守護者 〜レスレリアーナのアトリエ〜
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- プレイ人数:1人
- PS5:紅の錬金術士と白の守護者 〜レスレリアーナのアトリエ〜
- PS4:紅の錬金術士と白の守護者 〜レスレリアーナのアトリエ〜
- Nintendo Switch:紅の錬金術士と白の守護者 〜レスレリアーナのアトリエ〜
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- 編集部:御月亜希
- BiliBili World 2025
- PC:ライザのアトリエ 〜秘密トリロジー〜 DX
- PS5:ライザのアトリエ 〜秘密トリロジー〜 DX
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- PS4:ライザのアトリエ 〜秘密トリロジー〜 DX
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- Nintendo Switch:ライザのアトリエ 〜秘密トリロジー〜 DX
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本当の「グローバル」とは,国境の枠組みを打ち破り,皆がもはや意図的にそのことを強調したり,注意を向けたりしなくなることにこそあるのではないだろうか。
今年のBWでは,表舞台でも舞台裏でも,異なる国や文化の人々が皆,自分なりの努力で,この新興の展示会をより良く,より速く成長させようとしていることが感じられた。確実に「みんなで薪を拾えば炎は高く上がる」という感動的な雰囲気が形成されていたのだ。
プレイヤーと出展社の「セルフサービス」がないと破綻していた
しかし急速すぎる成長により,BWは相応の問題も露呈している。
現場での数日間,おそらく筆者がメディアパスを着用していたため,(一般来場者とは違うパスなので)運営スタッフだと思われたのか,毎日展示館内で一般来場者に道を尋ねられる回数が二桁回を超えた。これは恐らく,ほかの多くのメディアや出展者スタッフの共通体験でもあっただろう。
現場では,少数の安全検査口を除いて公式スタッフの密度が相当低く,多くがボランティアで,観客に効果的な支援を提供することは困難だった。
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これは恐らく,会場内でほとんど海外来場者を見かけない理由の一つでもある。ローカルの観客でさえその中での移動に苦労している状況で,言葉の通じない外国の人ならなおさらである。
普通の観客の観覧体験がそうであったのだから,仕事で来た人々は,なおさら苦労を免れなかった。
BW正式開幕の前日深夜まで,筆者は日韓のゲームメディア数社が翌日からの入場パスを取得するのを支援していた。
これらの海外メディアは,公式サイトでメディア用の申請フォームがないことを分かっていても,「そうはいってもメディア用の入場ルートがあるだろう」と素朴に考えていたのだ。
ちゃんとした展示会であればどこでも絶対に確実にメディアパスはあるのだが,残念ながらその「ちゃんとした展示会」の中にBWは含まれていなかった。
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そもそも海外メディアにおいては,まずWeChatアカウントを作るところからのスタートだ。
Bilibili社員の努力により,筆者も韓国メディアの入場パスを無事取得できた。相手は大変喜び,とても多くの感謝を表してくれたが,本来はこのように紆余曲折があるはずではないと,我々メディアは皆知っている。
出展者からの不満も少なくない。Weiboで「世界之外(Beyond the World)」が,公開書き込みで「BWの運営に絡むべきではないし,来年のBWには参加しない」と宣言した。深夜までオンライン論争が止まらず,「恋と深空」の出展チームも巻き込まれた。※
※どちらのタイトルも多くのプレイヤーが会場にきていて,限りある室内の整列場所について紛争が絶えなかった
一部の出展者も,それに近いことがあったと言葉を漏らした。早くから主催者にイベント申請をしたにもかかわらず,現場では実施不許可と告げられた。どこで却下されたかも追求できず,実行可能な代替案もなく,出展社が自分で来場者への説明を考えるしかなかった。
主催運営の人員不足で,ブースに整列させるための人員は自腹でバイトを雇うしかなかったが,その上スタッフパスをもらうには,BWに1名あたり800元を“上納”しなければならなかったというメーカーもいた。
ある程度,Bilibiliの自社展示とステージ周辺を除いて,今年のBW現場はプレイヤーと出展者間の「セルフサービス」で行えたようなものだった。
Bilibili自体は,専門の展示会主催者ではない。これは短期間でBWをアジア最大のACG展に押し上げた理由でもあるが,同じだけの問題も引き起こしている。
Bilibiliの自社事業はゲーム、コミックといろんな形の関連性を持ち,それもBWがこんなイベントを起こせる理由でもあった。Bilibiliにあるコンテンツを引き出せば,十分に一つの展示会を成立させられる。
しかし今年に至っては,BWが獲得した外部リソースがほぼ爆発的な増長を見せ,大企業内部の関係や利益は複雑に絡み合っている。これらのリソースをどう分配し,どう活用するかは,調整力や企画力が大いに試される問題であり,「需要のミスマッチ」によって生じる気まずい場面もある。
典型的な例として,「アジア最大の痛車集会」を謳って,当初800台を超える痛車の集結が企画されていたが,手配や管理が適切でなかったため,多くのオーナーは,自分たちが単に出展者や関係者の人数合わせのために呼ばれただけだと感じ,SNS上で行かないほうがよいと投稿してそれが話題となった。
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40万人の来場者を達成した後のBWが目指す先
もちろん短期的には,今年様々な記録を破ったBWは,来年もきっと賑やかであろう。現在の中国二次元文化とゲーム消費市場に蓄積されたエネルギーは,オフラインシーンに向けて,まだ大きな解放空間がある。
しかし,このエネルギーを放出する窓口は,BWやオフラインイベントだけではない。
BWの潜在的な主要競争相手は,必ずしもChinaJoyやほかのゲームショウではない。総合的な展示会に参加するよりも,メーカーとゲームIPが自社の小規模活動を開催する機会と条件をより多く持つようになっていることは無視できないだろう。
上海においては,百聯ZX,静安大悦城といったポップアップストア形式でBWと直接連動している施設などについては,言うまでもない。
今回のBW期間中,国内外の一部メーカーは会場内で混雑に巻き込まれることを避ける選択をした。
XD Inc.の「トーチライト:インフィニティ」,Tencent Gamesがパブリッシングする韓国産MMO「LOST ARK」,ポーランドのTechlandが発売予定の新作「Dying Light: The Beast」は,いずれも国内で別会場を選んで,独自にイベントを開催した。
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元々オフラインイベントの開催が得意な二次元ゲームメーカー各社も,既に皆が馴染みのあるオンリー展や○○祭では満足しなくなっている。
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「アークナイツ」個別イベントの試運営に行ってみた経験から言えば,入場時にスタッフが周りを囲んで「ドクターこんにちは」「ドクター,こちらへどうぞ」と呼びかけてくれるだけでも,総合展での人混みの中での「取り合いごっこ」と比較すると,体験の質の次元が違う。
イベント全体のインタラクティブ体験も,普通の展示会では簡単に実現できない内容ばかりで,前述した「物質よりも感情体験を重視する」に近いところに到達している。
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メーカーが独自にイベントを開催する場合,会場選びや演出形式においても明らかにより自由度が高く,サービスも通常より細やかで行き届いている。必要であれば,入場券の販売やグッズ販売などの形式で収支バランスをコントロールできる。
こうして見ると,BWの現在の主要競争力は,依然として参加者数と展示面積の「アジア最大規模」に依存している。今年40万人の来場者を達成した後,BWに対する期待は疑いなく上昇し続けており,どのオフラインのエンターテインメントプロジェクトも羨ましがるほどだ。
しかし,大量の来場者がもたらすのは堅固な城壁ではなく,極めて高コストなチケットである。かつての世界最大のゲーム展示会E3が,高額なコスト,出展社の意欲低減,世界的パンデミックなどの長期的または突発的な理由で一夜にして消失したことは周知の事実である。
結局のところ,展示会主催者は真に有形の資産を持っていない。製品も土地もなく,設備や技術もない。展示会が「老舗」になれる競争力は,十分な公信力を持つブランド効果と,健全な協力と相互信頼だけである。都市,会場,出展者,観客,メディアを問わず。
この「相互信頼」は,ある回の展示会がより大きな数字を打ち出したかどうかとは無関係で,招待,スケジュール,チケット販売,警備,緊急対応などの各側面でより経験豊富な運営システムを蓄積し,長期にわたってより専門的な実行チームを磨き上げる必要がある。
一般の来場者は,確かにこれほど多くの細部を気にしない。BWは現在独特の生態で,次回がより良くなるかどうかは,通りすがりの人にとってそれほど重要なことではない。
ソーシャルメディアでは,多くの来場者が様々な交通手段で遠方から来て,特殊部隊のような疲労感ある移動を経て,自分の心の中にある「二次元理想郷」を一目見るためだけに来ている姿を見ることができる。
BWの現場内容は,通常においては彼らの期待を満たすことができるため,「次回もまた来たい,チケットを取れることを願う」以外に,彼らは多くの要求を出すことはない。
しかし,本当に時代を超えた展示会ブランドへと変貌を遂げ,東京ゲームショウやgamescomのようなお馴染みのイベントとなり,ほかのゲームショウとの差を広げ続けて競争に生き残るためには,規模の優位や,現在から数年の市場とユーザーボーナスだけでは,遠く及ばない。
より柔軟で,より体系的で,よりチェックの厳しい専門的な運営が必要である。
次回のBWでは,そんな部分も含め,さらなる成熟を見ることができることを願っている。(著者:Lushark)
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