会場ではサンリオの代表取締役社長である辻 朋邦氏,常務執行役員の濵﨑皓介氏が新事業について説明を行った。本稿ではその様子をお伝えしよう。
![]() |
![]() |
![]() |
サンリオは,「ハローキティ」「マイメロディ」など450以上のキャラクターや,「サンリオピューロランド」「ハーモニーランド」といったテーマパークを展開している。
これまではキャラクターを他社にライセンスアウト(使用許諾)したゲームが発売されてきたが,今後は自社のゲームブランド「Sanrio Games」による自社パブリッシングも並行して進めることが明らかになった。2029年3月までに10タイトル程度をリリースする予定だという。
Sanrio Gamesはパートナー企業とのゲーム開発を進めており,その第一弾となるのが「サンリオ パーティランド」である。プラットフォームは,Nintendo Switch 2 / Nintendo Switchで2026年秋に全世界同時発売される予定だ。
![]() |
同社は「みんななかよく」という理念のもと,新目標としてユーザーがキャラクターに親しむ「サンリオ時間」という概念を提唱し,現在はサンリオ時間をいかに増やすかがテーマとなっている。
辻氏によれば,サンリオは今後10年で「自社IPや他社IPをグローバルに展開していけるプラットフォーマー」を目指しているという。その中でもゲームはマーケットが大きいのに加え,ユーザーが向き合う時間が長く,深度もある娯楽であるため「エンターテインメント企業として,出ていかなければならない領域」と認識しており,今回のSanrio Games設立に至ったそうだ。
また,ゲームを出すことで,これまでサンリオキャラクターに触れていなかった人にも新たな価値を提案していきたいと考えていると語った。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
濵﨑氏はSanrio Gamesのゲーム事業に関し,「Why(なぜ)」「What(何を)」「How(どうやって)」という3つのポイントから語った。
・Why(なぜ)
すでにサンリオは450以上のキャラクターを展開しているが,従来のグッズやテーマパークでは場所などの制約が存在する。一方,ゲームであればこうした制約に縛られることなく,サンリオが展開していない地域にも,多数のキャラクターを届けることが可能である。
また,ゲームにはキャラクターを自分で動かしたり,触れ合えたりというインタラクションが存在しており,これも魅力であると捉えているのだそうだ。
こうしたゲーム領域に,サンリオ自らがリスクを取って投資することにより,ここからSanrio Gamesの開発パートナーやライセンスアウトする企業の新たなエコシステムが広がるのでは,と期待しているという。
・What(何を)
Sanrio Gamesが提供するのは,すでに多くのファンを擁するサンリオキャラクターたちである。“ショップでグッズを購入するとゲーム内で使える「秘密のカギ」が付属し,新ワールドへ行ける”“ゲーム内で作ったアバターや,サンリオキャラクターの衣装がサンリオピューロランドに反映される”といった,ゲームとリアルの連動も考えているそうだ。
また,ゲーム内でキャラクターを見ることで思い出を刺激される「時空を超えるような体験」の創出や,ゲームジャンルそのものの開拓,「サンリオキャラクターの新たな仲間として,ゲーム発のIP」といった要素も視野に入っているという。
![]() |
・How(どうやって)
プロデューサー,ディレクター,マーケターといったゲーム業界経験者がすでにジョインしており,外部の会社と開発を行っている。基本的に企画はサンリオからの持ち込みであり,パートナーの開拓も進めているという。
また,投資委員会によるチェックが開発の各段階で行われており,継続性のあるサステナブルな運営を目指しているとのことだ。
![]() |
サンリオではKPI(重要業績評価指標)として前述したサンリオ時間が使われている。これは,グッズを身に付けつつ仕事や勉強をしている“寄り添い時間”,キャラクターに没頭する“夢中時間”に大別されるが,ゲームの体験は後者に分類される。
2025年3月期には5億時間の夢中時間を創出した(関連リンク)が,Sanrio Gamesでは,今後3年間に10タイトル程度をリリースすることで,20億時間を創出できるのではないかと考えているという。
![]() |
自社パブリッシング第一弾となる「サンリオ パーティランド」は,ユーザーがオリジナルアバターを作成し,145種以上のサンリオキャラクターたちとともに,ボードゲームや着せ替え,シール集めなど45種以上のオリジナルミニゲームを楽しめる。
キャラクターについては,どんなコミュニケーションが作り出せるかにこだわって制作を進めているのだという。
開発会社も熱量が高く,サンリオが発行する「いちご新聞」を読み込んだうえで,その秘密をゲームに取り入れるといった取り組みもされているという。キャラクターも可愛らしく仕上がっており,辻氏も「胸キュン」し,濵﨑氏自身もテストプレイ中に声を上げてしまったとのこと。
![]() |
![]() |
説明会終了後には,辻氏,濵﨑氏による質疑応答が行われた後,濵﨑氏,専務取締役の中塚 亘氏による囲み取材が行われた。そこで得られた回答をお伝えし,本稿の締めくくりとしたい。
――「サンリオ パーティランド」のターゲット層を教えてください。
濵﨑皓介氏(以下,濵﨑氏):
ファミリー層はもちろんのこと,サンリオキャラクターは北米,欧州,中国,アジアのZ世代にも人気を博しているので,そうした層にも楽しんでもらえるのではないかと考えています。
――ゲームを作るうえで,ジャンルをどのように選んでいますか。また,サンリオならでは強みをどう出していくのでしょうか。
濵﨑氏:
FPSなどのジャンルは,グローバルで人気を博していますが,親として子供に触らせるには抵抗があると思います。
しかし,キャラクターやサンリオの世界設定でラッピングすることにより,親も一緒に触りたくなるようなゲームになるのではないかと考えています。世の中で人気のあるジャンルをサンリオキャラクターや「みんななかよく」という理念で新たな遊びに昇華するということを意識していきたいです。
可愛さにもいろいろあり,なかにはゲーム内でキャラクターが動くことで表現されるものもあります。この辺りは,サンリオとしての強みと考えています。
――ゲーム事業には大きな初期投資が必要になりますが,事業の最大のリスクは何であると考えていますか。
濵﨑氏:
初期投資が大きくなるのは認識しており,ポートフォリオをきちんと作っていくことが大事だと考えています。ゲームは1本作って必ず当たるというものではなく,今後の10タイトルもそれぞれ狙う領域やターゲットを多様化し,成功したものをナンバリングタイトルするなどの展開をしていきます。
「1本出して当たらなかったからおしまい」ではなく,なるべく多様性のあるゲームを多く届けることでリスクヘッジしていきたいと考えています。
――ゲーム事業については今期赤字の見込みと発表されましたが,いつごろの黒字化を目指していますか。
濵﨑氏:
具体的な時期は差し控えますが,1本1本がしっかりヒットして収益化できれば,ゲーム事業単体でも十分に黒字化は可能であると考えています。
――ゲーム事業単体での収益性を重視するのでしょうか,将来的な顧客の獲得やIPの認知度向上につながればいいと考えているのでしょうか。
濵﨑氏:
ゲーム事業単体で安定させたいと思っています。ゲーム事業としての安定的な収益基盤を築くことが,結果的にグローバルで認知を獲得していくことにつながると考えています。
中塚 亘氏(以下,中塚氏):
収益性はライセンシングのほうが高いのですが,これまでと違ったターゲットにIPの良さを広げていくのが大事だと考えています。だと考えています。ゲームの企画は投資委員会でチェックしていますが,赤字前提のタイトルはありません。
――グローバルに展開することの意義や,期待することは何でしょうか。
濵﨑氏:
海外のファンにサンリオキャラクターの新たな一面を知っていただくという観点でも,非常に意義のあることだと考えています。グッズやテーマパークが展開できていない地域もあり,こうした地域での新たなファン層の獲得にも寄与できると思います。
辻 朋邦氏(以下,辻氏):
北米でのシェアは現在3〜4%ですが,今後10年で10%を目指しています。いろいろなキャラクターのシェアを広げなければならないなか,ゲームで多数のキャラクターを展開できるのは大きな意味があります。
――「サンリオ パーティランド」で任天堂のゲーム機を選んだ理由を教えてください。
濵﨑氏:
パーティーゲーム,キッズやファミリー向けということで,Switch2/Switchとの相性が良いだろうということで選びました。
Z世代やそれ以上の世代に向けたもの,運営型として長く楽しんでいただくタイトルについてはモバイルというように,適切なプラットフォームを選んでいきます。
ライセンスアウトの場合,人気キャラクターに焦点が当たりがちですが,自社開発ならそうでないキャラクターも取り上げられますし,サンリオが大切にしている周年で物販や映像と連動できるといった強みがあります。
――サンリオに接点がなかった層にどうゲームを届けていくのでしょうか。
濵﨑氏:
子供に初めて与えるゲームをどうするか考える人も多いと思いますが,「サンリオ パーティランド」を安心安全なゲームとすることで,新たな層にファンになってもらえるのではないかと考えています。
今後はモバイルのタイトルも想定していますが,これまでのサンリオキャラクターがやってきたようなアーティストやキャラクターとのコラボをしていくことで,ゲームに触れていない層にも触れてもらえる機会を作れるのではないかと。
辻氏:
ゲーム発のIPも考えており,男児など,これまでサンリオのファン層にいなかったところにアプローチをかけていきたいと考えています。
![]() |
――今後,オールスターものではない,特定のキャラクターを深掘りするようなゲームも出るのでしょうか。
濵﨑氏:
現在「フラガリアメモリーズ」のゲーム版の制作を進めていますが,今後も単一キャラクターをフィーチャーしたゲームが出てくると思います。
――今後ゲームの展開をしていくうえで,キャラクターの一貫性はどのように保っていくのでしょうか。キャラクターを深堀りしていくと,映像,グッズなど設定の統一がますます大切になっていくと思いますが。
濵﨑氏:
キャラクターをどう深掘りするかは,ゲーム事業に限らず映像やSNSなど,さまざまな部分で出てくる課題です。サンリオでは「キャラクタープロデューサー」がいて,担当するキャラクターに関しては,展開するメディアの種類を問わず世界設定全体のオーソライズ(承認)を行っています。
各事業がバラバラに何かキャラクターを深掘りするのではなく,ブランド管理全体の中で展開をしているのです。
中塚氏:
これまでサンリオキャラクターはスタティック(静的,動かない)であったことが強みでしたが,IPとして深掘りをすると,今までになかった側面が作られていくと思います。
その中で,デザイナー自身が気付かなかった魅力が引き出されることもありますし,サンリオキャラクターは複数の世界を行き来できる強みがあるので,引き続き生かしていきたいです。
――「ハローキティ アイランドアドベンチャー」でも,これまであまりスポットが当たらなかったキャラクターが登場し話題を呼びましたが,こうした展開も行われるのでしょうか。
中塚氏:
既存キャラクターに新たな息吹を吹き込めるというのは,とてもいいチャンスであると考えています。従来のファンの方も驚いてもらえるのではないかと思います。
――今後,ゲーマー向けなディープなゲームが出てくる可能性はあるのでしょうか。
濵﨑氏:
今までリーチできなかったキャラクターやジャンルにチャレンジしていきたいと思っています。
例えば「フラガリアメモリーズ」は,ターゲットを成人女性としています。ゲームでは,キャラクター同士の関係性を掘り下げていきたいですし,このように深みが担保されたものを作りたいと思っています。
ただ,AAAタイトルにいきなりトライするのは難しいので,基本的にはキャラクターの魅力を最大限に生かしたものにしていく予定です。
――現在行っている「Roblox」やVR方面への投資は継続するのでしょうか。
濵﨑氏:
「Roblox」については最大のプラットフォームということで引き続きライセンス形式でゲームを出していきます。VRは没入感やユーザー同士の交流があり,ゲームとは違った価値があるので,別事業として育てていきたいと考えています。ゲームで入手したアイテムをVRに持っていけるといった連動も視野に入れています。
――サンリオが持つ日本IPならではの強さは,どういったところだと考えていますか。
濵﨑氏:
ワクワクや爽快といった他社IPが追求するものとは違った,安心や安全を大事にした,拠り所としての時間を創出できることに強さがあると考えています。
今回の発表会は,サンリオが今からゲーム事業を始める理由と意味を明確に言語化する場だったと感じた。こうした理念のもと,どのような作品が発表されていくのか,今後に期待しよう。

































