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このローカライズは僕がやるしかなかったんです――。文字だけの世界を冒険する「文字遊戯」を日本語にした翻訳者に話を聞いた[BitSummit]
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印刷2025/07/22 17:09

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このローカライズは僕がやるしかなかったんです――。文字だけの世界を冒険する「文字遊戯」を日本語にした翻訳者に話を聞いた[BitSummit]

 ローカライズというのは,その国の文化や価値観にあわせた翻訳のことで,単なる翻訳とは異なる。ことわざや慣用句,ダジャレなどの言葉遊びは,翻訳機にかけても意味を理解するのが難しく,ローカライズの重要性を感じる場面だ。
 そんなローカライズだが,素人目にも困難さが分かるタイトルが「文字遊戯」である。

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 本作は,世界のすべてが文字で構成された世界を冒険する「真なる文字冒険遊戯」(シン・テキストADV)だ。プレイヤーが操作するのは,「我」
 テキストにある文字を切ったり,文字を引っ張って移動させたり,漢字を合体させたり,漢字の部首などを分離させたりして,状況を打開していく。




 謎解きの要素が強くあり,例をあげるとネタバレになってしまうのだが,Steamストアページにある内容で紹介すると,「スライムが邪魔で進めない。どうしたものか」というテキストがあれば,「進め」の部分を断ち切り,「スライムが邪魔でない。どうしたものか」というテキストにすれば,邪魔だったスライムが消え,先に進めるという感じだ。

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 また,鳥がいれば,我と鳥を合体させ,「鵞」(ガチョウ)を操作することも可能になる。鵞ならば,河も難なく泳いで行ける。鵞なんて思いつかないとしても,ヒントがあるので,あれこれ試していれば,「なるほど,こういう漢字があるのか」と勉強になるし,何より先に進めて嬉しくなる。

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 出口がない,という場面でも,出口となる「門」などを探したり,作ったりして,そこに進めば脱出できる。

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 2025年7月18日から20日まで,京都市勧業館みやこめっせで開催されたインディーゲームイベント「BitSummit the 13th」では,特別試遊版を展示していた。本編の内容をBitSummitのために調整したもので,詳しい内容はネタバレになってしまうので,避けておこう。

 ただ,試遊部分終了時に現れる画面も,本編と同じような仕掛けが隠されており,移動キーを入力すると,「画面前の君へ」の「君」が動きだす。この君を「表題画面へ」まで持っていけば,タイトルに戻る。細かいところまで,抜け目ない。

もともと左上にあった「君」を動かし,右下まで移動させているところ
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 本作は,台湾のインディースタジオ・Team9の第1作だ。2022年1月に繁体字・簡体字のオリジナル版がリリースされ,2025年8月にいよいよ日本語版がリリースされる。文字がゲームシステムそのものに組み込まれているのだから,単に翻訳したらそもそもゲームが成り立たなくなるはずなのに,どうやって日本語にしたのだろうか。

 会場には,準備期間を含めて本作のローカライズを3年かけて1人でやりきった翻訳者の黄 政凱(Kou Seigai)氏も来場していた。日本語版のパブリッシングも担当するフライハイワークスの代表取締役でもある同氏に,ローカライズについて話を聞いた。

パブリッシング&ローカライズ会社・フライハイワークスCEO・黄 政凱氏
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4Gamer:
 正直,どうやって日本語にできたのでしょうか。

黄氏:
 やっぱり単純なローカライズでは,うまくいかないです。文字数にも制限があって,必ずここにはこの文字が来ないといけない,という文章をずっと考え続ける必要があって。まるで地獄の「もじぴったん」を永久に,終わりの見えないままやっている気分でした。

 これまで,「逆転裁判」(中国語:逆轉裁判)や「Steins;Gate」(中国語:命運石之門)の日中ローカライズなど,さまざまな難題にも取り組んできましたが,段違いです。レベルが違い過ぎました。

4Gamer:
 そんな無理難題を1人で引き受けたんですね。

黄氏:
 もう中国語版は,5000レビュー以上ついていて,かなり好評を得ています。ただ,最初日本語化の打診をされたときは,これはよくある「文字のパズルゲーム」だろうなという印象で。とりあえずやってみて,断ろうと思ったんですね。
 これは大変なだけで,あんまりウケないだろうなって。でも実際やってみたらそれに収まらない,とんでもない展開が待っていたのです。日本の誰もまだ知らない,本当にとんでもない展開なんです。

 それで,「うん,もうこれ(ローカライズ経験もゲーム制作経験もある)僕にしかできないんじゃないの?」という使命感に駆られて。それでもやっぱり迷って,検証に半年かかって,スタートしたのが2年半前になりました。

4Gamer:
 その検証が第零章(プロローグ版)につながったんですね。

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 フライハイワークスは本日,アドベンチャーゲーム「文字遊戯 第零章」配信を,Steamで開始した。価格は無料。本作は,2024年に配信される予定の真なる文字冒険遊戯(シン・テキストADV)「文字遊戯」のプロローグにあたる作品で,プレイヤーが「我(ワタシ)」を操作して,世界を救う旅にでる。

[2023/07/14 13:29]

黄氏:
 その第零章が出て,賞もいただいちゃったので,もう後戻りできないよなと。あれで好評を得られなかったら,降りようかなと考えていたんです。
 でも,「吉田修平さんに認められちゃったじゃん!」だから,「もう俺やるしかないじゃん!」ってなっちゃいました。

文字遊戯は「BitSummit Let’s Go!!」(2023)でPlayStation賞を獲得(画像はPlayStation.Blogより)
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 今年のBitSummitでも,吉田氏はブースを訪れ,挨拶を交わしていた。


黄氏:
 正直,当時は本当にローカライズできるか,半信半疑なところもありました。日本にはこんな漢字は存在しない,ということが何度も。ただ,今までゲームを作った経験があるからこそ,仕様を捻じ曲げたりして。
 基本的にはストーリーラインは保持したまま,どうしても無理なところは,製作者がこの問題でこういうことを言いたいんだな,というのを理解しつつ,なんとか日本語の訳に当てはまるようにしました。

 とりあえず,日本人プレイヤーに遊んでもらったときに,文字遊戯が海外のゲームだとあまり気づかれず,プレイできるものにはなっていると思います。

4Gamer:
 とくに印象に残っている漢字やワードはありますか。

黄氏:
 これ言っちゃうとネタバレになっちゃうからなぁ(笑)
 でも,例えば,「さんずい」みたいな特定の部首の漢字は,これを含む言葉,あれを含む言葉という風に,ずっと探していました。
 なぜ詳しいことが言えないのかは,プレイしてもらえれば分かります。実際に製品版をプレイしてもらえれば,「あぁ,俺もこれは言えねぇな」ってなりますから。

 多くは言えないけど,やってみてびっくりしてほしい,そう思っています。

4Gamer:
 いよいよリリースが近づいていますが,意気込みや不安などはありますか。

黄氏:
 やっぱり白黒メインのゲームって派手さはない。だけど,いろいろな人に覚えてもらえている実感はあります。

 正直,ゼロから生み出している部分もあるので,100点満点ではないと思うんです。
 だけど,僕ができることはすべてやりました。もうローカライズを引退したいくらいです(笑)

 そして,自分の最高傑作になったのも間違いないです。このローカライズは僕がやるしかない,という使命感から始まったので,それが日本の皆さんに届くならすごく嬉しいです。ぜひ,プレイしてみてください。

4Gamer:
 ありがとうございました!

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 文字だけの世界を冒険する文字遊戯の日本語版は,2025年8月に発売予定だ。魂を込めて3年間のローカライズに挑んだ黄氏が語る「とんでもない展開」とは何か,製品版のリリースを楽しみに待ちたい。

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