
インタビュー
[インタビュー]猫,潜水艦,そしてキリン。元SIE・吉田修平氏がBICで見た,韓国インディーの現在地。「もう2,3年したらドカンといくかも?」
いやあでも,さっき吉田さんもおっしゃってましたけど,去年よりレベルが上がった気がするんですよ。
吉田氏:
やっぱりそう思いました?
4Gamer:
ただ全体が優秀になった分,尖ったやつがなくなって,そこはちょっとだけ残念だなと。
吉田氏:
そうですね。なんか過渡期な感じがしますよね。
例えば2年前のG-STARのインディーコーナーって,半分ぐらいはエロ系のアドベンチャーゲームみたいな感じのが多かったんです。
4Gamer:
ビジュアルノベル的な。そんな感じでしたっけ。
吉田氏:
そうそう。なので正直今回もそういうの多いのかなと思ってたら,もう一切ないじゃないですか。だからそういう意味では,全体的にもっと「コマーシャル寄り」になってそうな気はしますね。
4Gamer:
そうなんですよ。良い意味でも悪い意味でも,コマーシャル感が増しちゃったんですよね。
吉田氏:
まさにそれ。クオリティも上がって,割と普通のジャンルのゲームを作っている感じはありますね。
でもBitSummitもそうでしたけど,それは運営側の考え次第で,あるテーマでもっとごちゃごちゃしたのを掘り起こすみたいな,そういうことはできるとは思うんですよね。ただ,普通に募集して良いやつを選んじゃうと,こうなっちゃうんだろうなぁ,という部分もあると思っていて。
4Gamer:
確かにそうですね。
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ただ,運営の人と話してて確かにそうだなと思ったいい点は,テーマごとになってるじゃないですかこれ。アクションエリアとか,ストーリーエリアとか。それはすごく分かりやすくていいなと思いました。
私なんかも,自分が好きだからチャレンジ系(注:新しいコンセプトの作品が置かれているゾーン)に行こう,RPGとかやらないからそっちはパスでいいかな,みたいな。そのテーマ分けシステムはすごく良いと思いました。ほかのイベントでも真似していいんじゃないかと。
4Gamer:
実はそれ,個人的には偏っちゃうからあんまりよくないんじゃないかな? と思ってまして。
吉田氏:
いや,わざと偏らせてるんですよ?
4Gamer:
あ,すみません。来場者が,です。
吉田氏:
あー,なるほどね。人気ジャンルに人が偏るリスクがあるんじゃないかと。
4Gamer:
ええ。
吉田氏:
なるほどね。確かにアクション系とかはとくに人気があるから,そういうこともあるかもしれないですね。
4Gamer:
にしても,全部審査してるのすごいですよね。
吉田氏:
普通どのイベントでもそうじゃない?
4Gamer:
あ,そうなんですか? 全作品プレイするんですか?
吉田氏:
私は東京ゲームショウの,インディーコーナーの審査委員やってるけど,死にますよ毎回(笑)。数百あって。
まぁ確かにゲームはやらないですね,あまりにも多いから。気になるものはやるんですけど,まあでも700本ぐらいのビデオはYouTubeで観ましたね。
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「SENSE OF WONDER NIGHT 2025」公式サイト
4Gamer:
それだけでも確かに結構大変そうです……。
吉田氏:
審査委員ってグループに分かれてやるんですよ。だから,応募した作品はもっと多いんですけど,グループを分けて,ばーっと見て,点数付けて,議論して,絞り込んで,また今度そこからもう1回絞り込んで……みたいなのをやってると,もうね,何回土日が潰れたか(笑)。
4Gamer:
それ,まさかボランティアなんですか?
吉田氏:
交通費ぐらいは出たような気がしますね。
4Gamer:
なるほど。それは使命感がないとなかなかツラいですね。
吉田氏:
いや,楽しい楽しい。ホント楽しい。楽しいし,プレイアブルのも来るので,その気になればいっぱい遊べるっていうね(笑)。だから,ありとあらゆるゲームイベントの審査委員やってるんですよ。
年間通じて毎月のように20〜30タイトルが送られてきて,プレイして,点数付けて,場合によってはイベント行ってプレゼンターやるみたいな。そういうのをやってます。
4Gamer:
ここもぜひやってあげてください。
吉田氏:
うん。そうですね。いや,ここまだアワードとかないですよね?
4Gamer:
ありますよ。最終日の夕方に発表です。
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吉田氏:
頼まれたらやりますよー!
4Gamer:
BICの審査は全部プレイしないといけないという縛りがあるんですけど大丈夫でしょうか……。
吉田氏:
なるほど。何タイトルなんですかね,1人あたり。
4Gamer:
さっき全体で560本と言ってた気がするので……。
吉田氏:
え,いや,それ全部はできないですよね?
4Gamer:
30人が,それを全部プレイすると言ってた気がしますよ。
吉田氏:
分けてですよね。
4Gamer:
どうもそうではなさそうです。
吉田氏:
いや……それは無理ですね。
4Gamer:
やりたい人がいなくなっちゃうんじゃないかと心配してます。
吉田氏:
そうですよね(笑)。
しかしさっきもおっしゃってましたけど,凝っている,面白いコンセプトのタイトルがあんまりなかったですね。アワードとかどうなるんだろう。
4Gamer:
やっぱりそういうところは,BitSummitの方が多かったなと正直に思います。
吉田氏:
そうそう,クリエイティビティを感じますよね。BitSummitの運営側も,やっぱりそれはすごく意識してるようですし。
4Gamer:
やはりそうなんですね,ああいうラインナップは。
吉田氏:
去年,フロアを増やしたじゃないですか。その前の3階ははもうほんとにギチギチで,毎年毎年,どんどんどんどんコマーシャル化してたのを自分たちも感じていて,もっと,すごい草の根的なゲームが最初はあったのに,どんどんなくなってたね……っていう感じで。
それで去年フロアを増やすことで,もう一度門戸を広げることができたと言ってました。
4Gamer:
ですよね,すごくいい感じでした。とくに1階と3階のあの,いかにも「インディでござる」っていう感じのゴミゴミした一角がすごく楽しかったです。
吉田氏:
あとはキュレーションですよね。方針次第だと思います。
4Gamer:
韓国の話に戻しちゃうんですけど,コンソール・PCなどのいわゆる商業ゲームは,政府などの補助金が結構あるんですけど,インディーのサポートはいまいち薄いらしいんですよ韓国も。
吉田氏:
まさに今なんか始めてる感じですよね。NEOWIZの人も,政府のアドバイザーをやってると言ってましたし。
韓国インディーゲームの“生態系”を作りたい――NEOWIZインディー部門のキーマンと吉田修平氏による現場目線な特別対談[BitSummit]
![韓国インディーゲームの“生態系”を作りたい――NEOWIZインディー部門のキーマンと吉田修平氏による現場目線な特別対談[BitSummit]](/games/571/G057139/20250722070/TN/038.jpg)
「Lies of P」「SANABI」のパブリッシャでも知られるNEOWIZは,どのような考えで韓国のインディーゲームを支えているのか。「BitSummit the 13th」で実施した,同社のインディー部門のキーマンであるチョン・ナムジュ氏と,長年現場でインディーシーンを見守ってきた吉田修平氏の対談をお届けしよう。
4Gamer:
BICなんかは釜山市がお金出したりしてますね。
吉田氏:
そうですか。
いや……政府だけじゃなくて,地方政府がお金を出してるというのはいいですね。日本ではないかも。
4Gamer:
京都は出してないんですか,BitSummit。
吉田氏:
京都は「イベントに対してのサポート」なんです。
4Gamer:
あぁなるほど。会場が安いとかタダ同然とかそういうやつですね。
吉田氏:
そうそう。でも韓国なんかだと,お金返さなくていいやつもありますよね。
4Gamer:
ありますね。日本もそういうの作ってくださいよ。
吉田氏:
「創風」というのが始まりましたよ。
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4Gamer:
はい,存じています。でもこう……なんかメーカーの色が付いちゃいそうな感じがして。ゲーム業界にエンジェルみたいな投資家っていないものですかね。まぁゲームと投資ってびっくりするくらい相性が悪いので,難しいかもしれませんけど。
吉田氏:
あと日本は昔から大手のゲーム企業がたくさんいましたから,「サポートする必要がなかった」業界なんですよね。
でも今となってみれば,やっぱりインディーゲームというものはサポートしなくては,グローバルに市場もこんなに広がっているし……みたいなことに気付いてスタートしてる感じみたいですね。
4Gamer:
なるほど。気付いてはくれているんですね。
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